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1 傾向スコア分析の方法

(2) c統計量の計算

計算した傾向スコアが,2つの治療をうまく識別できているか確認が必要である。
治療の割り当て変数を状態変数(1または0)とし,傾向スコアを検定変数とするROC

(receiver operating characteristic)曲線を描き,曲線下面積(area under curve:

AUC)を求める。このAUCがc統計量(c-statistics)に相当する。0.5≦c統計量≦
1.0である。c統計量が0.5のときは識別力なし,1.0のときは完全識別という。

c統計量は高すぎても低すぎてもよくない。これについては後述する。

(3) 傾向スコア・マッチング

傾向スコアによる群間のアウトカム比較には,傾向スコア・マッチング(propensity 

score matching),傾向スコアの逆確率による重み付け(inverse probability weight-
ing:IPW),および傾向スコアによる調整(propensity score adjustment)などの方法
がある。

臨床家にとっては傾向スコア・マッチングが最も理解しやすく,また最も汎用されて

いる。そこで本章では傾向スコア・マッチングから解説する。

1) 最近傍マッチング

治療A群と治療B群から1対ずつ傾向スコアが近接しているペアを抽出する方法を,

最近傍マッチング(nearest neighbor matching)という。マッチングの方法にはこれ
以外にも,最適マッチング(optimal matching)などいくつかあり,詳細な説明は成書
に譲る

5)

。しかし,最近傍マッチング以外は使う必要がほとんどない。