上述の通り,ハザードは時間とともに変化し,このハザードを表現する数
式をハザード関数と呼びます。2つ(以上)の群を比較する場合には,各群
のハザードの比である「ハザード比(hazard ratio)」に注目します。Cox回
帰モデルは,ハザードそのものは時間とともに変化したとしても,ハザード
比が時間とともに変化しないことを仮定します。これを比例ハザード性の仮
定(proportional hazards assumption)といいます。このためCox回帰モデ
ルは比例ハザードモデルと呼ばれることもあります。
比例ハザード性の仮定が適切かどうかは,二重対数プロット(log‒log plot)
やシェーンフィールド残差(Schoenfeld residual)という方法を用いて検討
されます
2)
。
図7‒2
を作成したデータを用いて二重対数プロットを描出した
ものを
図7‒4
に示します。2つの線が平行に近いことから,比例ハザード性
の仮定が成り立っていることが期待できます。
図7‒2
から
図7‒4
までを作成したデータでは,介入群の対照群に対するハ
ザード比は0.22と推定されました。これは,比例ハザード性の仮定のもとで
は,どの時点でも2群間のハザード比は0.22であることを意味します。
一般的なハザード比の解釈方法としては,ハザード比が1より大きい場合,
介入群のハザードが対照群に比べて高く,アウトカムが発生しやすいことを
意味します。逆にハザード比が1未満の場合,介入群のアウトカムが対照群
に比べて発生しにくいことを意味します。
図7‒2
の例では,介入群は対照群
に比べてハザードが0.22倍であり,アウトカムが発生しにくいということを
意味します。注意すべきは,このハザード比0.22は,実際の生存割合(この
研究では無再発割合)の比を示すものではないということです。例えば,
図
7‒2
における追跡期間中央値(10.5週)の時点の生存割合は,介入群が約
0.75,対照群は約0.38でした。
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