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 十年一昔とは,「世の中は移り変わりが激しく,10年もたつともう昔のこととなってしまう」(小学館『デジタル大辞泉』より)という意味です。医学は日進月歩で発展が目覚ましいといわれます。医学においても「十年一昔」は当てはまるのでしょうか? このような疑問に答えるいくつかの興味深い研究結果があります。 ある研究では,治療の効果(主に薬物治療)を検証したメタ解析(meta‒analysis)の7%は結果が発表された時点に,23%は2年以内に,50%は5.5年以内に時代遅れとなることが示されています12)。メタ解析で得られた結果を覆す新しい科学的根拠が比較的短期間で頻繁に発生していたのです。 ガイドラインはどうでしょうか? アメリカのAHRQ guidelineとイギリスのNICE clinical guidelineを対象にした研究では,5年前後でガイドラインの半分に大規模な改訂が必要であり13,14),ガイドラインに含まれる各推奨のうち20%が3年で時代遅れとなっていました15)。 UpToDateやDynaMedなどに代表される5つの臨床系EBMツールの更新頻度を調べた研究もあります16)。更新頻度が頻繁であれば良いツールであることを保証するわけではないものの,更新頻度が最も頻繁なのはDynaMedでした。 臨床的意思決定に関連する科学的根拠は短期間で変化することを,臨床家はよく認識する必要があるでしょう。 (森田光治良)124Column臨床知識の寿命はどれくらいか?

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