第1章第2章第3章第4章第5章第6章第7章113り(non‒informative censoring),後者は情報のある打ち切り(informative censoring)とも呼ばれます。 従来の生存時間分析(カプランマイヤー法,Cox回帰分析)では,ランダムな打ち切りを仮定しています。「打ち切りを受けた患者は(その後観察できないにしても)観察を継続できている患者とアウトカムの発生率がその時点で同じである」という仮定です。ランダムな打ち切りの典型例としては,研究期間終了や,地域住民のコホート研究における転居が挙げられます。ランダムでない打ち切りについては,競合リスクを考慮した分析方法のところで詳述します。 カプランマイヤー〔Kaplan‒Meier(KM)〕法は,ある時点までに生存している者の割合(生存割合)を表す生存関数を曲線として表現する方法です。図7‒2に,一般公開されているデータ(The Gehan‒Freirich Survival Data1))を使って作成したカプランマイヤー曲線を示します。このデータは,急性白血病患者に対しある治療を行った介入群21人と対照群21人の,白血病の寛解状態から(研究上のアウトカムである)再発を起こすまでの時間に関する情報を含みます。 図7‒2において横軸は観察期間を表し,縦軸は生存割合(この研究では無再発割合)を表します。時間とともにアウトカムが発生し,無再発割合が階段状に下がっています。介入群に比べ,対照群では早い段階から無再発割合が下がっています。①に示すような,所々に上に伸びている「ヒゲ」は,その時点で打ち切りが発生したことを意味します。②に示す「Number at risk」とは,各時点の追跡対象者数を意味します。観察期間が長くなるにつれ,アウトカムや打ち切り発生により追跡対象者数は少なくなっています。 カプランマイヤー法に関連して,2つ(以上)の群の生存時間を比較する方法は以下のようにいくつかあります。なお,これらは単純な群間比較ですので,交絡因子の影響が考慮されていないことに注意が必要です。第7章 ● 生存時間分析における競合リスクモデル(3)カプランマイヤー法
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