116 上述の通り,ハザードは時間とともに変化し,このハザードを表現する数式をハザード関数と呼びます。2つ(以上)の群を比較する場合には,各群のハザードの比である「ハザード比(hazard ratio)」に注目します。Cox回帰モデルは,ハザードそのものは時間とともに変化したとしても,ハザード比が時間とともに変化しないことを仮定します。これを比例ハザード性の仮定(proportional hazards assumption)といいます。このためCox回帰モデルは比例ハザードモデルと呼ばれることもあります。 比例ハザード性の仮定が適切かどうかは,二重対数プロット(log‒log plot)やシェーンフィールド残差(Schoenfeld residual)という方法を用いて検討されます2)。図7‒2を作成したデータを用いて二重対数プロットを描出したものを図7‒4に示します。2つの線が平行に近いことから,比例ハザード性の仮定が成り立っていることが期待できます。 図7‒2から図7‒4までを作成したデータでは,介入群の対照群に対するハザード比は0.22と推定されました。これは,比例ハザード性の仮定のもとでは,どの時点でも2群間のハザード比は0.22であることを意味します。 一般的なハザード比の解釈方法としては,ハザード比が1より大きい場合,介入群のハザードが対照群に比べて高く,アウトカムが発生しやすいことを意味します。逆にハザード比が1未満の場合,介入群のアウトカムが対照群に比べて発生しにくいことを意味します。図7‒2の例では,介入群は対照群に比べてハザードが0.22倍であり,アウトカムが発生しにくいということを意味します。注意すべきは,このハザード比0.22は,実際の生存割合(この研究では無再発割合)の比を示すものではないということです。例えば,図7‒2における追跡期間中央値(10.5週)の時点の生存割合は,介入群が約0.75,対照群は約0.38でした。
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