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脳神経

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CQ

背景・目的

 自己免疫性膵炎 (type 1)は中高年男性に好発し,ステロイド治療が奏効するため,診断が重要である。現在

では全身性疾患IgG4関連疾患の膵病変として認識され,血清IgG4という非常に有用な血清診断マーカーが存

在するが,絶対的なものではなく,画像検査は本疾患を疑う際や,他疾患との鑑別において大きな役割を果たして
いる。

解 説

 自己免疫性膵炎は全身疾患IgG4関連疾患の膵病変であり,顎下腺や胆管,腎臓,後腹膜などに異時性,同
時性に病変を形成する。IgG4関連疾患の中でも最も頻度の高い病変であり,膵病変単独で見つかることも多い。
病理学的には病変部にリンパ球,形質細胞浸潤,閉塞性静脈炎,線維化といった変化が見られ,画像所見に反映

される。画像所見に関しては以前より国内外より報告が数多くされており,主な画像所見は以下の通りである

1-3)

 1)膵全体が腫大(ソーセージ様)する。
 2)腫大実質を取り囲む様にrim様構造(capsule-like rim)がみられる。
 3)罹患部膵実質は膵実質相にて造影効果が低下し,後期相にかけて漸増性に増強される。
 これらの所見はダイナミックCTで容易に捉えることが可能である。膵臓の腫大に関しては大きさの定義が曖昧で
判断に迷うことがあるが罹患部では膵臓辺縁部の分葉構造が消失し,直線化することがある。capsule-like rim

に関しては非常に特異性が高く,診断に有用な所見ではあるがその頻度は16-80%と報告によりばらつきが見られ

1)2)4)5)

。ダイナミックスタディーでの造影効果に関してTakahashiらは膵実質相(造影剤急速注入後35〜45

秒),肝実質相(造影剤急速注入後60-70秒)における検討にて膵実質相で正常膵よりも造影効果が低く,肝実
質相にかけて漸増性に増強されることを示した

3)

。自己免疫性膵炎診療ガイドライン2013においても膵腫大および

ダイナミックCTにおける遅延性濃染,capsule-like rimがAIPを示唆するCT所見として推奨されている(参1)。

典型像を呈する症例に関してはダイナミックCTのみで充分診断可能であり(図1),血清IgG4上昇があれば確
定診断が可能となっている

6)

。この点は本邦から報告された自己免疫性膵炎診断基準2011(参2)でも同様であ

り,膵実質の腫大がびまん性か限局性であるかで分類されており,前者は画像と血清IgG4値で診断が可能であ

る。後者は膵癌との鑑別を要するため,確定診断に至るためには血清IgG4値や組織所見,膵外病変といった項
目を加味して診断に当たる必要がある(参2)。実際の日常診療では限局性に腫瘤形成を生じる限局型の自己免

疫性膵炎(focal AIP)と膵癌との鑑別が画像上問題となる症例が存在する

7)

。focal AIPと膵癌との鑑別に有

用な画像所見として腫瘤内を膵管が貫通する(duct-penetrating sign),後期相での均一な濃染がよく知られて
いるが

8)

,この他focal AIPにおいてSugiyamaらはダイナミックMRIでの検討で腫瘤内にspeckle状の濃染を

認めることを報告し,膵癌との鑑別において91.7%の正診率が得られたと報告している

9)

(図2)。CTにおける検

A

 造影

CT 

B

 

MRI 

自己免疫性膵炎の診断に造影

CT 

を強く推奨する。

MRI 

は特に膵腫大が軽微である症例

や限局性腫瘤症例において役立ち,治療法の選択にも役立つ。

推奨グレード

A

推奨グレード

B

自己免疫性膵炎 (type 1)の診断に有用な画像診断は何か?

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