正常細胞がん細胞● 熱量としては少ないエネルギーの放射線で人体に損傷が起こるのは,人体内に生存に関わる標的(ターゲット)が存在し,そのターゲットに放射線が当たると生命活動に傷害を与えるからと考えられる。そのターゲットはDNAである。● 放射線が細胞に当たると電離が起こり,DNAを● 塩基を切断するのに必要なエネルギーは,その結合にもよるが,DNAやRNAに対しては6~10 eVの間である。● たとえば,セシウム137(137Cs)の1回の崩壊で発生するガンマ線のエネルギーは662 keVなので,DNAの塩基を切断するのに十分である。● 電離により切断されたDNAの断片は修復されれば元に戻るが,修復できない場合(失敗)は,生命活動に支障をきたす。● がん細胞と正常細胞に対して,放射線の影響に差をつけるため,実際の放射線治療では分割照射が行● 細胞は放射線が照射されても,時間をおくとそのダメージを回復する能力がある。その回復能力は,正常細胞の方ががん細胞よりも高い。そのため,放射線を照射後に時間をおいた場合,正常細胞とがん細胞で回復している細胞数に差ができる(上図②)。● そのあとで放射線を照射すると(上図③),まだ回復しきっていない細胞が死滅するため,正常細胞が第1章第2章第3章第4章第5章第6章第7章第8章第9章第10章第11章第12章第13章第14章第15章放射線人 体 拡大! 拡大! 細 胞 DNA半殺し状態 ①放射線を照射 半殺し状態 多くは回復 ②時間をおく ③放射線を照射 回復しにくい 死死ダメージが少ない 死死死死死死ダメージが大きい 25われている。多く生き残り,がん細胞の多くが死滅する。互いに結び付けている塩基を切断する。 2 ヒトの生命活動に支障をきたす標的▲ 標的を探っていく 3 正常細胞とがん細胞の違い▲ 分割照射の概念
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