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100  ●8章.読影のピットフォールマンモグラフィの読影では,重なりあう乳腺組織の中から,いかに正しく乳癌をはじめとする病変を拾い出すかが重要である。読み落としはもちろん,読みすぎも困る。以下に読影時のコツを紹介する。明らかな腫瘤や石灰化などが存在せず,異常なしと判断する前に,以下のチェックポイントを押さえてほしい。ほとんど時間はかからない。筆者の経験では,この作業により見落としを防げたことも多い。また,構築の乱れや過去との比較の方法のコツも紹介する。本来の意味は“天の川”である。マンモグラフィではMLO 撮影で大胸筋前縁に沿う帯状の領域をスウェーデンの放射線科医TabárがMilky way(ミルキーウェイ)と呼んで注意を促している(図1)。この部位は,本来であれば“retromammary space”であり,“主乳腺の深部”と表現するのが個人的には正しいと思う。萎縮した乳腺組織が存在する場合があるが,もし何らかの陰影(density)が存在した場合には,そのdensityが萎縮した乳腺組織なのか,真の病変なのかを注意深く検討する必要がある(図2a)。2方向撮影をした場合,1方向でしか分からない所見をどう解釈するだろうか。もちろん1方向でも腫瘤や石灰化,構築の乱れなどが疑いなく病変であると解釈できる場合には,描出されているほうを優先して,次のステップに進むだろう。1方向で描出されている病変が真の病変であるかどうか迷う場合には,まずその所見が別の方向で撮影範囲に入っているかどうかをチェックする。この場合,MLO撮影では大胸筋と並行するラインを想定して乳頭からの距離を測ってほしい。これをCC撮影に適応して撮影範囲にあるかどうかをチェックする。明らかな撮影範囲にあり,病変として描出できない場合には,正常乳腺の重なりなどによるいわばアーチファクトの可能性を考えて,もう一度その所見の濃度,辺縁の性状などをみてみよう(図3)。よく経験するのは,MLO 撮影で上方部分に異常があって,CC撮影で認められない場合である(図2)。A区域(上内側)から12時方向の高い部分の場合,圧迫板を胸壁に沿って下ろすときに病変が逃げてしまい撮影範囲に入らないことがある(図4)。逆をいうと,MLO撮影の高い位置に描出されるdensityで,CC撮影で撮影範囲に入らない病変はC’区域(腋窩に近い部分)にあるようにイメージしがちであるが,実は12時〜A区域に存在することを知っておく必要がある。マンモグラフィでチェックした病変を超音波検査でチェックする場合には,必ずA区域寄りを確認しておく必要がある。マンモグラフィで乳癌は“白く”描出されるために,読影する場合,つい白いほうに目がいきがちである。しかし,“黒い部分”,つまり脂肪を意識して読影することで,注目する所見が単に脂肪で押されている乳腺組織であると理解できる場合が少なくない。だまし絵の理論である。ぜひ黒からのアプローチを試みてほしい(図5)。Ⅰ 見落とし,読みすぎを防ぐポイント 1 “Milky way”をチェック 2 2方向撮影で1方向のみ描出された病変をどう読むか 3 脂肪で押される乳腺組織が腫瘤の辺縁のようにみえる場合のチェック方法

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