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1) Levine D et al:Simple adnexal cysts:SRU consensus conference update on follow-up and reporting. Radiology 293:359- 2) Patel MD:Management of incidental adnexal findings on CT and MRI:a white paper of the ACR incidental findings committee. 3) 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会 編:産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2017.日本産科婦人科学会,2017371, 2019J Am Coll Radiol 17:248-254, 2020(BQ66を参照)。「単純様嚢胞」は薄く平滑な壁の円形・楕円形,内部水成分,充実性成分や隔壁を有さない単房性嚢胞である。機能性嚢胞や非腫瘍性嚢胞が多く,閉経後も14~20%とされ,稀でない1, 2)。閉経前の82%,閉経後の44~69.4%で自然消退する3-5)。閉経前の3 cm以下は正常卵胞と考え,閉経後も1 cm以下は異常とはしない。閉経前5 cm以下,閉経後3 cm以下も「単に存在するもの」であり,経過観察不要としている。閉経前の5 cmより大きく7 cm以下,閉経後の3 cmより大きく5 cm以下では,どの程度確実に「単純様嚢胞」と判断しているかで対処が分かれる。「評価不十分」は画質が悪い,非造影などで評価が不十分な場合で,「MRIで十分に評価」とは,腫瘤発見の契機となったMRIで「腫瘤全体がT2強調像,造影前後のT1強調像の,少なくとも2方向で撮像されている」ことを示す。それより大きなサイズは超音波での経過観察としている。ACR(American College of Radiology)では経過観察の間隔を6~12カ月後としている。腫瘤が退縮・縮小している場合にはそれ以上の経過観察は不要となり,増大している場合には腫瘍を疑うのに十分な期間としているが,エビデンスはない。10 cm以上は経腟超音波では評価が不十分になるため,MRIが勧められる。「質的診断ができる腫瘤」はCT,MRIで質的診断ができる一群である5)。出血性嚢胞は,閉経前の5 cm以下の多くは出血を伴った黄体嚢胞や機能性嚢胞であり経過観察不要であるが,閉経前の5 cmより大きいものは超音波での経過観察,閉経後ではサイズに関わらず超音波もしくはMRIを行う。内膜症性嚢胞,奇形腫は悪性化のリスクもあるため,産婦人科医による管理としている。悪性が疑われる腫瘤は超音波やMRIで精査する(BQ66を参照)。「診断が不確かな腫瘤」は上記以外の腫瘤となる。超音波で質的診断を行うが,必要に応じてMRIを行う「単純様嚢胞」の対処は2019年に改訂された。「単純様嚢胞」がサイズにかかわらず悪性のリスクは非常に低いこと,不必要な経過観察は時間とコストの無駄のみでなく,疑陽性による不必要な手術とその合併症を引き起こすこと6-8),高異型度漿液性腺癌は卵管由来であり,単純様嚢胞が前癌病変ではないことが知られるようになり9),以前より大きなサイズまで「経過観察不要」とされた。ここで注意したいのは「確実に単純様嚢胞と診断できたもの」に限られることである。確実に診断できない場合は超音波,MRIで評価すべきである。造影MRIは良性であることを確定する特異度が高く,禁忌でない限り造影MRIを行う10)。また,単純様嚢胞はサイズに関わらず悪性のリスクが非常に低いとしながらもサイズによって対処を変えている。SRU(Society of Radiologists in Ultrasound)は大きな腫瘤ほど超音波で充実性成分などを見落とす確率が高くなるからとしているが,サイズにエビデンスはない。本邦の「産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2017」では,閉経の前後を問わず6 cmを超えると茎捻転のリスクが高まるため産婦人科での管理が望ましいとしている。十分なエビデンスがなく,専門家の意見による部分もあるため,患者の状況や背景に応じた個々の対応も必要となる。また,下記を二次資料として参考にした。359検索キーワード・参考にした二次資料PubMedによりovary,ovarian,adnexa,adnexal,incidental,incidentaloma,asymptomatic,US,ul-trasound,ultrasonography,CT,computed tomography,MRI,magnetic resonance imagingのキーワードを用いて検索し,さらに取捨選択した。FQ 10

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