♳ ガイドライン作成の目的様々な領域で行われている画像診断法に関してEBM(evidence︲based medicine)の手法,すなわち「個々の患者の医療判断の決定に,最新で最善の根拠を良心的かつ明瞭に,思慮深く利用する手法」に基づいて,画像診断を用いた診療が効果的・効率的に行われ,アウトカムとして患者の利益になるようなものになることを目的とした。特に標準的撮像法,画像診断の適応とその効果について詳しく論じた。♴ 改訂について画像診断ガイドラインは2003年に日本放射線科専門医会・医会より,2007,2013年には日本医学放射線学会と日本放射線科専門医会・医会の共同策定事業によってEBMの手法に基づき作成された。2016年版(以下,前版)から日本医学放射線学会が事業を引き継ぎ,「Minds 診療ガイドラインの作成の手引き2007」 1)に基づき作成した。2021年版(以下,本版)では「Minds 診療ガイドライン作成マニュアル2017」 2)に基づき,GRADE(grading of recommendations assessment, development and evaluation)3)システムを取り入れて大幅改訂を行った。各領域別の標準的撮像法に関しては3T︲MRIおよび64列CTの撮像法を加えて更新した。また,前版の9領域に加え,新たに小児と血液の領域を章立てした。読者の対象は,前版までは“画像診断専門医”であったが,本版では“基幹学会の医師”となるように意識して作成した。♵ 想定される利用対象者本版は,画像診断を専門とする医師(専門医)のみならず,基幹学会の医師にも利用しやすい内容となるように心掛けた。診療放射線技師などメディカルスタッフにも参考になるものとした。♶ 使用上の留意点ガイドラインは,あくまで作成時点で最も標準的と考えられる指針であり,実際の診療行為を規制するものではなく,その使用にあたっては診療環境の状況(人員,経験,設備など)や個々の患者の個別性を加味して,柔軟に使いこなすべきものである。記述内容に関しては学会が責任を負うが,診療結果についての責任は直接の診療担当者に帰属すべきであり,日本医学放射線学会および本ガイドラインの作成委員は一切の責任を負わない。保険医療の審査基準,さらに医事紛争や医療訴訟の資料として用いることは,診療ガイドラインの目的から逸脱することは言うまでもない。♷ 本版の構成と策定手順前述したとおり,本ガイドラインは2003年を初版とし,適宜改訂を行ってきた。画像診断を扱うすべての領域を網羅しており,脳神経,頭頸部,胸部,心血管,消化器(肝癌,肝胆道,膵,消化管),泌尿器,産婦人科,乳房,骨軟部,小児,血液の11領域(消化器を細分類すると14領域)で構成されている。前版から作成・改訂の主体は日本医学放射線学会となっており,学会に常設されている画像診断ガイドライン委員会が実際の作成・改訂を行っている。ガイドライン委員会には全領域の作業を統括補助する中央委員と,領域別に14の小委員会から構成される。5画像診断ガイドライン2021年版の概要
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