2頭頸部BQ 10成人副鼻腔炎においてCTは推奨されるか?ステートメント通常は合併症のない急性副鼻腔炎にCTを施行する必要はない。副鼻腔炎の存在診断・原因検索が必要な場合,眼窩内・頭蓋内合併症が疑われる場合,手術が考慮される場合,腫瘍性病変が疑われる場合にCTの撮像を推奨する。慢性副鼻腔炎においても単純X線撮影の感度・特異度は内視鏡検査より低い6)。CTは骨の評価に優れ,粘膜肥厚も容易に評価できるため,副鼻腔炎に対する標準的な検査となっている4, 5, 7-10)。さらにCTでは副鼻腔炎の原因となる解剖学的変異,歯性上顎洞炎,真菌性副鼻腔炎などを評価できる4, 11)。したがって,CTが撮像可能な環境においては,単純X線撮影を省略し,最初からCTの撮像が推奨される12)。CTは内視鏡手術の術前評価として重要な解剖学的構造(蜂巣・洞口鼻道系,篩骨孔,視神経管,内頸動脈など)の描出に優れており,撮像が推奨される1, 4, 8, 12)。造影剤使用の有用性に関しては十分なエビデンスはないものの,慢性副鼻腔炎では造影剤を使用する必要はなく,腫瘍が疑われる場合には使用を考慮してもよい。コーンビームCTは,2001年より商用化された,X線を錐体状に照射し,2次元検出器で読み取る方式のCTである。多列検出器CTと比較して低価格,コンパクト,低線量のため,副鼻腔炎を診断する有力なツールとなりえる。しかし,組織コントラストが低く,洞外への炎症波及など,軟部組織病変の評価には適していない13, 14)。MRIは骨の描出がCTに劣り,撮像時間もかかるため,副鼻腔炎に対する最初の画像検査とはなりにくい7, 8)。しかし,組織コントラストがCTより優れ,頭蓋内・眼窩内への炎症波及が疑われる場合には,MRIの撮像が推奨される1, 4, 8, 9)。浸潤性真菌性副鼻腔炎が疑われる場合にも,洞外への炎症波及を評価するため,MRIの撮像を考慮すべきである。また,MRIでは液体貯留と腫瘍の鑑別が容易であり,副鼻腔炎の原因として乳頭腫や癌などの腫瘍性病変が疑われる場合にも有用である7, 10, 11)。頭蓋内・眼窩内合併症や腫瘍が疑われる場合は造影剤の使用が望ましく,脂肪抑制造影T1強調像を撮像する。以上を要約すると,合併症のない急性副鼻腔炎に画像診断は必須ではない。単純X線撮影はCTが撮像できない環境であれば施行を考慮してもよいが,診断に有用という科学的根拠は示されていない。副鼻腔炎の存在診断・原因検索が必要な場合,眼窩内・頭蓋内合併症が疑われる場合,手術が考慮される場合,腫瘍性病変が疑われる場合に標準的検査としてCTの撮像が推奨される。頭蓋内・眼窩内合併症,腫瘍性病変,浸潤性真菌性副鼻腔炎が疑われる場合にはMRIの撮像が推奨される。84背 景外来診療で副鼻腔関連の症状を訴える患者に対して副鼻腔単純X線撮影が施行される機会は減少し,CTが標準的な画像検査となっている。さらに合併症が疑われる場合などにはMRIを追加することもある。このような検査の手順が妥当である根拠を解説する。解 説合併症のない急性副鼻腔炎は症状と経過および鼻内所見で診断され,通常は画像検査の必要はない1)。Berg-erらの内視鏡検査と単純X線撮影を比較した報告では,両者の診断能は同等であり,内視鏡検査を診断の第一選択として推奨している2)。内視鏡検査が陰性の場合や症状の強い場合は画像検査の適応となり得る。外来での検査はスクリーニング検査であり,高い感度が求められるが,単純X線撮影は感度が低く,急性副鼻腔炎で画像検査の適応になる際は,CTが標準的な検査である3-5)。
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