図2 メタアナリシスの結果た。MRIとCTのT因子病期診断の正診率,感度,特異度を比較している論文に関しては,以下に紹介する3編が該当した5-7)。3編ともに患者選択は連続症例で,症例減少にバイアスは認めなかった。3編ともインデックス検査(MRI)の解釈はブラインドで行われていたが,参照基準(病理診断)の解釈をインデックス検査(MRI)の情報なしに行った否かは記載がなく,インデックス検査(MRI)と対照検査(CT)間の間隔は3編中2編で記載がなく,施設間でフローバイアスの可能性があった。MRIの撮影法・診断基準が不均一で(造影ダイナミックMRIや呼吸ダイナミックMRIが混在),また前向きと後ろ向き研究が混在していた。Tangらは非小細胞肺癌患者の連続45例に対して,前向きに1週間以内に造影ダイナミックMRIと造影CTを施行しT因子病期診断能を比較している5)。胸壁浸潤の基準として,腫瘤と胸壁が3㎝を超えて接触,腫瘤と胸壁が鈍角で接する,胸壁内部への腫瘤の進展,胸膜外脂肪層の消失,肋骨の破壊像,のいずれかが認められた場合とし,縦隔浸潤の基準として,広範囲の腫瘤と縦隔の接触,胸膜や心膜の肥厚,腫瘤と大血管の180°以上での接触,腫瘤と縦隔構造間の脂肪織消失,のいずれかが認められた場合としている。T3-4を陽性とした場合の感度・特異度は,MRIの85%・91%に対しCTは69%・97%で,統計学的有意差はないものの感度はMRIが優れる結果であった。同論文では連続症例に対する前向き試験のため,CTで明らかな胸壁・大血管浸潤がない症例(T1-2症例が32/45)も含まれるため,特異度がMRIで91%(29/32),CTで97%(31/32)といずれも高い結果となっている。Hongらは呼吸ダイナミックMRIと造影CTで大血管浸潤の有無(T4か否か)を比較し,感度・特異度は,MRIの100%・71%に対し,CTは100%・29%で,統計学的有意に特異度でMRIが優れる結果であった6)。Changらも同様に呼吸/造影ダイナミックMRIと造影CTで胸壁・大血管浸潤の有無(T3/4か否か)を比較し,感度・特異度は,MRIの85%・89%に対しCTは85%・26%で,統計学的有意に特異度でMRIが優れる結果であった7)。今回の3編のメタアナリシス(図2)では,プール感度/プール特異度/symmetric SROC(summary ROC)のAUC/プール診断オッズ比は,MRI:86%/84%/0.92/36.9,CT:80%/43%/0.80/5.7と,有意差検定は論文数が少ないため行っていないが,いずれもMRIが優る結果となった。ただし,3編中2編6, 7)は後向き研究で,患者選択においてCTで明らかな胸壁・大血管浸潤がない症例,あるいは明らかに浸潤を認める症例にはMRIが施行されておらず,患者選択バイアスが含まれる。以上より,「T3-4診断が不確定な症例に対しては」の条件付きで,肺癌のT因子病期診断においてMRIを行うことを弱く推奨できると判断した。141CQ 4
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