■推奨文49CQ11大腸癌腹膜播種に対して可能な限りの減量手術と腹腔内温熱化学療法との併用療法は限られた症例で完全切除が得られる場合に行うことを提案する。[エビデンスの強さ:B(中),弱く推奨]腹膜偽粘液腫に対して可能な限りの減量手術と腹腔内温熱化学療法との併用療法は組織型やperitoneal cancer indexにかかわらず行うことを考慮する。ただし,十分な経験を有する施設では行うことを提案する。[エビデンスの強さ:C(弱),弱く推奨] 解説 多くの癌種において腹膜播種に対する標準治療は全身化学療法である。腹膜播種は,他部位の転移に比較して細胞障害性抗癌剤の感受性が低く予後不良と考えられてきた1)。近年,可能な限りの減量手術と腹腔内温熱化学療法を組み合わせた治療法(CRS+HIPEC)が世界的に広く行われるようになり,これまでの治療法より良好な長期予後が報告されている2)。この治療の要点は,外科切除によって播種病変を最小限に減量した後,残存病変に対して術中に腹腔内化学療法を行うことによって根治あるいは予後延長を目指すことである3)。ハイパーサーミアは,腹腔内化学療法を行う際に灌流液を41〜43℃に加温して抗腫瘍効果を高める目的で用いられる。広範囲な播種に対して肉眼的完全切除を系統的に行うために,Sugarbakerによって提唱されたperitonectomy proceduresが行われる。術後の合併症や死亡率の頻度は切除部位や切除範囲によって異なるが,それぞれ28.8%,2.9%と報告されている4)。肉眼的完全切除を安全かつ確実に行うためには学習曲線があり,十分な経験が必要である5)。したがって,CRS+HIPECについても国内外のガイドラインで共通に指摘されていることとして,経験のある施設において行う必要があるとされている。本邦においては,保険診療として認められていないためCRS+HIPECを行う施設は限られている。逆説的であるが,その限られた施設では十分な熟練度となっていることが推察される。一方,普及が進みつつある海外では,肝切除,食道切除,膵頭十二指腸切除などの高侵襲手術と比較してCRS+HIPECの術後合併症・死亡率は同等であったと報告されている6)。腹膜播種の腫瘍量と肉眼的完全切除の程度を量的に評価するために,peritoneal cancer index(PCI)とcompleteness of cytoreduction score(CC)が用いられる7)。CRS+HIPECは多くの癌腫で行われているが,ここでは,代表的な大腸癌,腹膜偽粘液腫について述べる。卵巣癌,胃癌,腹膜中皮腫など他の癌種でも多くの報告があり,とくに卵巣癌においては手術のみの場合に比べて無再発生存期間および全生存期間が延長したという報告からNCCNガイドラインに掲載されているほか,腹膜中皮腫でも海外のガイドラインで推奨されている8-10)。CQCQ11 腹膜播種に対してハイパーサーミアは推奨されるか?11腹膜播種に対してハイパーサーミアは推奨されるか?
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