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 ▶本例は血液検査にて血糖 768 mg/dL,HbA1c 13.1%,浸透圧 304 mOsm/kgと高値で糖尿病と考えられた。また,食事摂取も不良で,背景にケトーシスの存在も示唆された。インスリンによる血糖補正を行ったところ,症状は消失し,MRI所見も改善した(図2)。 ▶高血糖に伴う中枢神経障害は,高血糖性舞踏病(高血糖によるバリスム・ヒョレア),高血糖性半盲(hyper-glycemic hemianopia)が報告されている。高血糖性舞踏病はコントロール不良の糖尿病患者の非ケトン性高血糖時に生じることが多いが,血糖が検査時に正常でも,数週間前に既往があれば症状を来し得る。病変は片側性であることが多いが,両側性のこともある。MRIでは,患側被殻がT1強調像で高信号を示す。 ▶高血糖性半盲は当初非ケトン性高血糖時に生じると報告されていたが,最近では, 同一の病態でケトーシスを伴うこともあり,昏睡になることがまれで, 高血糖高浸透圧症候群(hyperglycemic hyperosmolar syndrome:HHS)によるとされている。病態として高血糖による高浸透圧血症により脳神経細胞が高度の脱水を来し, 痙攣などの症状を来すと推測されている。41例のシステマテックレビューによるとMRIでは全例片側性にみられ,T2強調像やFLAIRで灰白質が高信号(6割弱),直下の白質が低信号(約7割)を示していた。脳回/軟髄膜の増強効果(4割強),拡散制限(5割強)を伴うことがある。白質のT2強調像やFLAIRでの低信号は二次性の脆弱な白質へのフリーラジカルや金属(鉄)の蓄積による常磁性効果と想定されている。白質のみに異常信号を来した症例報告や白質のT2強調像やFLAIRでの低信号が臨床経過とも相関するという報告もあり,丁寧な所見の拾い上げが重要と考えられる。鑑別診断としてウイルス性脳炎や髄膜炎,髄膜播種,出血性梗塞,低酸素性脳症,抗 MOG 抗体関連疾患(皮質脳炎)などが挙げられるが,患者背景を十分に考慮すると比較的容易と考えられる。参/考/文/献/1)Lee SU et al:J Clin Neurol 16(4),599-604,20202)Raghavendra S et al:Neuroradiology 49,299-305,2007図2MRI(初回MRIより8日後)A:拡散強調像,B:T2強調像,C:FLAIR初回MRIと比較して,拡散強調像での高信号は遷延している(A⇨)。T2強調像やFLAIRでは皮質の信号はわずかに上昇し,軽度の腫脹を来しているが,直下の白質の低信号は不明瞭化している(B,C⇨)。ABC336高血糖に伴う異常信号(高血糖性半盲,hyperglycemic hemianopia)1,2)

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