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脳実質外腫瘍脳実質内もしくは脳室内腫瘍悪性リンパ腫・毛様細胞性星細胞腫・転移・血管芽腫・髄芽腫・乳頭腫・上衣腫頭蓋底腫瘍の進展非腫瘍性病変T1強調像で高信号T1強調像で低信号▶小脳橋角部に発生する腫瘤性病変は腫瘍性・非腫瘍性いずれも多くあるが,最も頻度の高いものは聴神経鞘腫(70〜90%)で,髄膜腫(5〜15%),類表皮嚢胞(6%)と続く。▶本症は聴神経鞘腫と診断された。 ▶聴神経鞘腫は,末梢神経を構成するシュワン細胞由来の腫瘍で,頭蓋内原発性脳腫瘍の10%とされるが,このうちの80%を聴神経鞘腫が占める。なお,小脳橋角槽にみられる神経鞘腫は聴神経鞘腫の頻度が最も高いが,三叉神経鞘腫や顔面神経鞘腫のこともある。 ▶聴神経は前庭神経と蝸牛神経からなるが,聴神経鞘腫の大部分は前庭神経由来である。聴神経の軸索は,脳幹から10 mm程度は中枢型髄鞘(グリア細胞)に,内耳孔付近から末梢側は末梢型髄鞘(シュワン細胞)に覆われ,聴神経鞘腫は両者のグリア・シュワン細胞移行部(neurilemmal-glial junction,Obersteiner-Redlich zone)付近に主に発生するとされていたが,近年は移行部付近よりも末梢側(内耳道中間部〜底部)発生を示唆する報告もある。患者年齢の中央値は,1976年は平均49.2歳であったものが2015年で60歳と徐々に上昇しているとの報告がある。一側性の発生が多いが,本症の5%は神経線維腫症2型(NF2)と関連し,両側発生を示す。聴神経鞘腫の60%は年間1 mm以下の増大を示すが,3 mm以上の増大を示すものも10%程度あり,NF2関連では増大が速い。充実性のものと比較して嚢胞性病変の方が,増大速度が大きい。病変が大きいと周囲構造との癒着の頻度が高くなり,術後経過に悪影響を与える。 ▶MRIでは,通常T1強調像で等信号,T2強調像で高信号を示すが,嚢胞形成(5〜15%)や嚢胞内出血を示すものもあり,内部の性状によってさまざまな信号を示す。造影T1強調像では均一(50〜60%)または不均一(30〜40%)な増強効果を示し,充実成分や嚢胞壁が増強される。腫瘤の直径が25 mmを超えると嚢胞や壊死成分を伴い不均一な増強効果を示すとの報告もある。拡散強調像では白質と同等の信号を示し,平均ADC値は1.4×10−3 mm2/sec前後とされる。灌流は比較的低いことが多いが,富血管性のものもあり(5〜30%)(参考症例①,図2),その場合は,後述の髄膜腫との鑑別が難しく場合がある。単純CTでは,充実部は脳実質と比較し等吸収〜軽度低吸収を示すことが多く,石灰化は稀である。内耳道(internalauditory canal:IAC)に対し中心性発育を示し(IAC centric),内耳道から小脳橋角槽に広が造影増強効果あり神経鞘腫・髄膜腫・転移・メラノーマ・孤立性線維性腫瘍・頭蓋咽頭腫傍神経節腫・軟骨肉腫・脊索腫・endolymphatic sac tumorサルコイドーシス・結核・Erdheim-Chester病・動脈瘤造影増強効果なし脂肪腫・類皮嚢胞・神経腸嚢胞・コレステリン肉芽腫類表皮嚢胞・くも膜嚢胞・脳嚢虫症表1小脳橋角部病変のまとめ94小脳橋角部腫瘤(neuroma)1,2)聴神経鞘腫(acoustic neuroma)

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