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1窒息による死亡の判定に死後画像を用いることは有用か?CQ00はじめに 死後画像と生体画像の違いについて窒息による死亡の判定に死後画像を用いることは有用か?死後画像には,生体画像でみる所見に加え,死後変化で生じた死体特有の所見を認める。例えば,血液就下,死後硬直,腐敗などを反映した所見があり,これらを生体画像でみることはない。画像上,死後変化は時に生前に生じた病態に類似することがあり,死後画像の読影では所見の解釈に注意が必要である。死後変化は時間経過とともに強まる傾向があり,撮影時の死後経過時間を考慮したい。また,蘇生術後変化も生前の画像所見に修飾を加えることになるため,留意する必要がある。解説死後画像は死後変化の影響を受けるため,通常臨床で取り扱う生体画像とは異なる所見が多くみられる。心肺蘇生術を行うとそれによる変化も加わる 1-4)。したがって,読影にあたっては生前の病態をこれら死後変化や心肺蘇生術後変化と見誤らないように注意しなければならない。死後画像の「正常」像や,病態や死因を反映した所見などの知識とともに,これらを整理する必要がある。死後画像所見は,生前の病態や死因,死後変化,蘇生術後変化に大別して考えるとよいといえる。になる。死体においては,循環停止によって時間経過ごとに様々な死後変化がみられ,主に重力や細菌などに影響を受けながら,体位,環境温,死亡場所などにも左右される。一般的に,死後比較的短時間からみられる死後変化(数日以内)を早期死体現象,時間が経ってみられる死後変化(数日以後)を晩期死体現象とよぶ。早期死体現象には,体温低下,角膜混濁,死斑(血液就下),死後硬直があり,画像で描出される現象の代表は血液就下である。循環が停止したことにより,血管内や臓器内で血液が重力に従って就下する。CTでは肺や頭蓋内の静脈洞で高頻度に認められる。一方,晩期死体現象は,自己融解・腐敗,白骨化,その他,死蝋化・ミイラ化がある。これらのうち,腐敗ではその進行に伴い,血管や臓器,軟部組織などにガスが認められるようになる。CTはガスの検出に優れ,晩期に至る前の比較的早期(死後数時間)でもガスをみることがある。死後変化は経時的に変化するため,撮影時の死後経過時間は重要な情報であり,読影で病態や死因などを判断する際に考慮する必要がある。同一死体の死亡直後と1日以上経過した時点(解剖直前)の2回のCT撮影を行った画像について,肺の所見が比較された研究がある 5)。これによれば,2回目に撮影されたCT画像のほうが死後変化の影響を強く受けているために,生前からあった異常所見が修飾される,あるいは隠れてしまう恐れが指摘されている。したがって,死亡直後の画像は死後変化の影響が少ないため,死因や死に至る経過を判断するのに適する一方,死後にある程度時死後変化とは 1-4)生物学的な死亡は,循環および呼吸の停止,脳幹機能の停止により確認されるよう

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