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解 説
1—1 膀胱洗浄後の膀胱持続灌流
肉眼的血尿
*
3
により膀胱タンポナーデ
*
4
のおそれのある患者に対しては,まず超
音波画像診断,尿道膀胱鏡
*
5
検査,CTなどによりアセスメントを行うことが望ま
しいが,全身状態や患者の希望を勘案してアセスメントの方法を検討する。一般的
な肉眼的血尿の対処として,3way尿道留置カテーテルを留置し生理食塩水による
膀胱洗浄の後に持続灌流が行われている。肉眼的血尿はしばしば膀胱内に凝血塊を
形成し,膀胱タンポナーデを引き起こす。膀胱内に凝血塊が残存する状態で膀胱持
続灌流を行うとカテーテル閉塞を引き起こし患者の苦痛が増悪する可能性があるた
め,膀胱洗浄し凝血塊を除去することが重要である。その後膀胱持続灌流を行うが,
生理食塩水の灌流による止血効果はあまり期待できず,むしろ凝血塊の形成を予防
する側面が大きい。
原因となる病変に対して外科的介入が可能であれば,生理食塩水の灌流よりも止
血には効果的である。そのような外科的処置もしくは手術が不可能な場合に膀胱内
への薬剤投与としてミョウバンの膀胱内注入は試みてもよい方法と考えられる。し
かし,本邦においてミョウバンの膀胱内注入は保険収載されておらず,日常泌尿器
臨床でも一般的ではないことに留意する必要がある。ミョウバンは食品添加物とし
て市販されている物質で,蛋白質を析出する働きにより止血作用を発揮するとされ
ている。ミョウバンの膀胱内灌流については,比較対象のない前向き研究やレ
ビューを数件認めるのみでありエビデンスは低い。施行後の成功率は50~100%と
される
1,2)
。それらのなかでは,副反応は重篤なものがなかったとされる反面,血漿
アルミニウム値の上昇,プロトロンビン時間の延長が有意であるとされる。灌流量
や灌流時間に相関が認められたとする報告
3)
やアルミニウム脳症のリスクを指摘さ
れることもあり,慎重に行われるべきである。
一方,同じく難治性の膀胱からの出血に対して以前行われていたホルマリンの膀
*
1:膀胱持続灌流
留置した3way尿道留置カ
テ-テルを通じ,灌流ルート
を用いて持続的に洗浄液を膀
胱内に流すこと。
*
2:尿路変向
腎から尿管,膀胱,尿道を通
して排尿されるという自然な
状態から変更し,さまざまな
方法で尿を体外に導くこと。
手術が必要であり,腎ろう,
膀胱ろう,回腸導管,尿管皮
膚ろうなどの方法がある。
*
3:血 尿
尿中に赤血球が混入した状
態。肉眼で確認できる場合を
肉眼的血尿,肉眼では判別で
きない場合を顕微鏡的血尿と
いう。
*
4:膀胱タンポナーデ
高度の血尿による凝血塊や組
織片などが尿の排出を妨げて
いる状態。
*
5:尿道膀胱鏡
尿道から挿入する膀胱内視
鏡。金属の筒を用いた硬性鏡
や軟性ファイバースコープ,
軟性電子スコープがある。
Ⅲ
章
推
奨
1 血 尿
●
血尿の診療アルゴリズム