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4)痛みのパターン 痛みのパターンは,1日のうち12時間以上続く持続痛と,一過性の痛みの増強である突出痛がある。痛みのパターンを知ることは治療方針の決定に役立つ。持続痛に対しては鎮痛薬の定期投与や増量,突出痛に対してはレスキュー薬および突出痛の病態に応じた治療を検討する。突出痛は,増悪因子があるものは増悪因子を同定し,予測できる増悪因子は避けるもしくは予防的に対処することを検討する。5)痛みの性状 痛みの性状は病態を同定する有用な情報となる。体性痛では「ズキズキする」「鋭い」など,内臓痛では「鈍い」「重い」「押されるような」など,神経障害性疼痛では「ビリビリ」「ジンジン」「電気の走るような」などと表現されることがある。がん疼痛では病態は単一ではないことも多いが,優位な痛みの病態を推定することが薬剤選択の参考となる。「狂いそうな」「死にたくなるような」といった表現は非常に高度な痛みである他に,心理社会的な苦しみが背景にある場合がある。6)痛みの増悪因子・軽快因子 痛みが強くなる,または和らぐ要因について質問する。これらを把握し,増悪する要因を避ける,予防的に鎮痛薬を使用する,軽快する方法を検討する。増悪因子として,体動,姿勢,食事,排泄,時間(夜間など),鎮痛薬の効果の切れ目などが,軽快因子として,安静,保温・冷却,マッサージなどが挙げられる。7)痛みによる日常生活への影響 痛みにより日常生活(睡眠,食事,排尿・排便,移動,入浴,更衣など)にどの程度支障を来しているのかを評価する。また社会生活(全般的な活動,外出,仕事,他人との関係,趣味・娯楽など)への影響も評価する。8)痛みに影響を与えるその他の因子 全人的苦痛の枠組みを参考に,痛みに影響を与える因子を評価する。不安,抑うつ,不眠,せん妄などの精神的苦痛,経済的な不安,孤立,社会的役割の喪失などの社会的苦痛,苦悩や絶望感などのスピリチュアルペインは痛みの感じ方を増強さⅡ 章背景知識痛み,一番弱い時の痛み,1日の平均の痛みに分けて評価するとよい。さらに,安静時の痛み,体動時の痛みに分けて評価することも治療法を決めるうえで参考となる。評価法としてはさまざまなツールが開発されており(P36,痛みのアセスメントツールの項参照),治療効果判定や情報共有に有用であり,患者の使える方法を選択し使用する。信頼性,妥当性ともに検証され,臨床で用いられているものとして,Numerical Rating Scale(NRS)が一般的である。NRSは,痛みが全くないのを0,考えられるなかで最悪の痛みを10として点数を問い,痛みの強さを評価する。痛みの強さを軽度,中等度,高度と分ける考え方があり,NRSにおいてそれぞれのカットオフ値について検討されているが,現時点では統一した見解は得られていない。本ガイドラインでは,専門家の合意として1~3を軽度,4~6を中等度,7~10を高度と便宜的に定める。352 痛みの包括的評価

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