9)現在行っている治療への反応,有害作用 現在行っている痛みの治療の効果を評価する。これまでの処方内容と指示どおり服用できているかを確認のうえ,持続痛の強度,突出痛の頻度と強度,レスキュー薬の使用回数と効果について評価する。服用ができていないときは,その理由や痛みの治療薬についての認識を評価する(P93,Ⅱ章‒7患者のオピオイドについての認識の項参照)。オピオイドを用いていれば,主たる有害作用として悪心,便秘,眠気について確認する。また,内服が負担になっていないか確認し,不要な薬剤はないか,投与回数や錠数を減らせる工夫がないかなども検討する。薬物療法以外に放射線治療や神経ブロックなどが行われていれば,それについても効果や有害事象の有無について評価する。3身体診察 系統的な全身の診察が,痛みの原因を検索・同定するために重要である。全身状10)治療目標を設定する 患者がどの程度の痛み,影響であれば許容できるのかを確認し,価値観を尊重したうえで現実的な治療目標を立てる。治療目標はNRSなどの疼痛強度だけでなく,例えば,睡眠がとれるようになる→座って食事がとれるようになる→移動が可能になる,といった生活の改善について段階的な形で目標を設定すると,患者との目標の共有や積極的な治療への参加につながりやすい。11)痛みのアセスメントツール 痛みのアセスメントツールは痛みの強さのみを評価するツールから,生活への影響もあわせて評価するツール,自分で痛みを訴えられない患者を評価するツールがある。痛みの強さを評価するツールとしてはNRS,Visual Analogue Scale(VAS),Verbal Rating Scale(VRS),Faces Pain Scale(FPS)がある(図1)。NRSは,痛みを0から10の11段階に分け,痛みが全くないのを0,考えられるなかで最悪の痛みを10として,痛みの点数を問うものである。VASは,100 mmの線の左端を「痛みなし」,右端を「最悪の痛み」とした場合,患者の痛みの強さを表すところに印を付けてもらうものである。VRSは,痛みの強さを表す言葉を順に並べて(例:痛みなし,少し痛い,痛い,かなり痛い,耐えられないくらい痛い),現在の痛みを表している言葉を選んでもらうことで痛みを評価するものである。FPSは現在の痛みに一番合う顔を選んでもらうことで痛みを評価するものであり,3歳以上の小児の痛みの自己評価において有用性が報告されている。これらのうち一般的にはNRSが推奨される。 痛みに加え生活への影響も効率よく評価するツールとして,Brief Pain Inventory(BPI)がある。認知症で自分で痛みを訴えられない患者の痛みの強さの評価尺度として,Pain Assessment in Advanced Dementia Scale(PAINAD:日本語版は未検証)がある。せる。一方,楽しみ,睡眠,支持的な関わり,家族や人との交流などは痛みの感じ方を軽減する。36Ⅱ章 背景知識
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