4検 査 血液検査結果では,炎症や感染の評価のほか,肝臓や腎臓などの臓器障害を評価し,鎮痛薬の選択・量の調整の参考にする。画像検査は痛みの原因,病態の同定に有用である。一方,検査に必要な移動,時間,検査体位が患者の負担になり得る。その他,検査の感度・特異度や前回の検査からの期間をふまえたうえでの検査結果による治療内容への影響など,メリットとデメリットを熟考したうえで,検査を計画する。 単純X線検査はベッドサイドで行うことができ,胸部X線では,胸膜肥厚や胸水,肺うっ血,浸潤影など,腹部X線では腸管拡張(ガス,便秘,イレウス),腹水など,その他の部位では骨転移,骨折などの痛みの原因の検索ができる。超音波検査もベッドサイドで行うことができ,胸腹水,腸管浮腫,イレウス,水腎症の検索ができる。CTでは腫瘍の位置や大きさ,性状から腫瘍と痛みの関連が評価できる。その他,膿瘍や骨,軟部組織などの詳細な情報が得られる。MRIでは頭蓋内病変,頭蓋底浸潤,脊椎病変,脊髄圧迫や神経根障害などが評価できる。骨シンチグラフィーでは全身的な骨転移病変の検索が可能であるが,特異度が高くなく,他の画像所見などもあわせて総合的に評価する。 2 痛みの原因を診断し,治療計画を立てる これまでの観察,病歴聴取,身体診察,検査結果から,痛みの原因・病態を診断する。直接,原因・病態に対する治療が可能なものはその治療を計画する。痛みが改善するまでの間,もしくは痛みが持続する場合には病態・機序に応じた鎮痛薬での治療を計画し,増悪軽快因子の調整や,痛みに影響を与えている全人的苦痛への対処を行う。介入後は,治療効果および有害作用の評価を中心に再評価を繰り返し行うことが,適切かつ安全に疼痛治療を行ううえで重要である。鎮痛薬の剤形・投与回数・時間・経路や経済的負担が日常生活に支障を来していないかなどの細かい点にも配慮する。効果を認めない場合,鎮痛薬が無効と判断し変更するのか,不足と判断し増量するのか判断が難しい際は,疼痛強度だけでなく日常生活の改善などを見逃さず,副作用とのバランスも参考に判断する。患者と設定した治療目標を共有しながら薬剤の調整を行う。寄与する。38Ⅱ章 背景知識
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