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4 まれな(頻度は1%未満)irAEとしてさまざまなものが報告されているが,理論上,irAEは体内のどの組織にも生じうることに留意されたい。その中でも,「がん免疫療法ガイドライン第2版」では取り上げられていないが,まれに血球貪食症候群(hemophago-cytic syndrome:HPS)が生じることがあり,対応が遅れると致死的になりうるため本項で取り上げる。128第2章 がん免疫療法これらの薬剤の投与の意義については定まっていないのが現状症(アスペルギルスなど),サイトメガロウイルス感染症の発症にも留意してモニタリングしていく必要がある。 ステロイド難治性のirAEについては,免疫抑制薬の追加投与が検討されるが,エビデンスは限られている(図4)。 また,実施臨床においては,患者の全身状態が不良である場合には十分な診断がつかないままに対応を迫られることがある。例えば,免疫関連肺臓炎か感染症か鑑別が直ちにつかない場合は培養検査等を提出の上,ステロイドと抗菌薬を同時に投与で治療を開始し,後日返却される検査結果や治療経過に応じて治療方法を軌道修正していくことが必要になる場合がある。 irAEの種類によっては対処法が異なる部分もあるため,詳細については「がん免疫療法ガイドライン」(日本臨床腫瘍学会)を参照されたい4)。Grade 3以上の下痢・大腸炎に対して高用量のステロイドを投与したにもかかわらず,48〜72時間 経過しても症状が改善されない場合や症状改善後に再増悪した場合は,抗TNF-α抗体製剤(インフリキシマブ5 mg/kg)が追加投与される。ステロイド不応性・難治性の免疫関連肝障害に対しては,インフリキシマブ自体に肝毒性があるため使用は原則的に禁忌である。報告は限られているが,ミコフェノール酸モフェチルの追加投与(例:1,000 mg, 1日2回 計2,000mg/日)が追加投与される。 抗TNF-α抗体製剤, ミコフェノール酸モフェチル, 抗α4β7インテグリン抗体(ベドリズマブ) , 免疫グロブリン(大量)療法(IVIG), メソトレキセート, アザチオプリン, リツキシマブ, シクロスポリンA, 抗胸腺細胞グロブリン(ATG)などが投与さirAEに対して国内未承認れることがある。図4 ステロイド不応性・難治性irAEに対する免疫抑制薬の使用下痢・腸炎:インフリキシマブ肝障害:ミコフェノール酸モフェチルその他のirAE:各種免疫抑制剤頻度は低いが注意すべきirAE

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