50第1章 腫瘍免疫学の基礎知識(MMP)を産生し,上皮間葉転換や転移に関わっている7)。(3)周皮細胞(pericyte) 血管壁などに存在するMSCに類似した細胞で,PDGF-βで誘導され,腫瘍血管の新生や増殖に関わるほか,TGF-β,PGE2の産生を通じてエフェクター細胞機能を抑制する8)。(4)腫瘍関連マクロファージ (tumor-associated macrophage:TAM) マクロファージは組織に常在するものと,末梢血中の単球から分化するものがある。MHC classⅡやCD80, CD86を発現したものが炎症性マクロファージ,これらのマーカーの発現が低くCD163(マウスではCD206)を発現したものが抗炎症性マクロファージの2群に大別され,それぞれM1マクロファージ,M2マクロファージと呼ばれているが9),実際にはその中間的なものや,サブタイプが多く存在している。腫瘍微小環境ではマクロファージは常に活性化状態にあるため,別途TAMと呼ばれる。このうちM2的なTAMはPL-L1を発現し,IL-10やTGF-β,アルギナーゼ,indoleamine 2,3 dioxygenase (IDO)などの免疫抑制性因子を放出することでエフェクターT細胞の抑制とTregの活性化をもたらす。さらにIL-6,VEGFなどがそれぞれ腫瘍増殖,血管新生を促す10)。(5)骨髄由来抑制細胞(myeloid-derived suppressor cell:MDSC) MDSCはマウスでCD11b+/Gr-1+の細胞として同定された未熟な細胞で,多形核を持つG-MDSCと,単球に由来するM-MDSCの2群に分類されるが,TAMに分化したり,2群間で表現型が移行するなど可塑性がある。ヒトでも同様な機能を持つ未熟な細胞が存在し,腫瘍微小環境でTMAなどと混在している。機能的にはTAMに類似している11)。(6)制御性B細胞(regulatory B cell:Breg) B細胞は抗体の産生と抗原提示によるT細胞活性化を行っていると考えられていたが,IL-10の産生やPD-L1の発現により自己免疫を抑制したり,がん免疫を抑制したりする機能を持つサブセットが存在することがわかってきた。このサブセットを特定するマーカーは多数報告されてきたが,組織ごとで異なり一定しないことから,IL-10産生性がマーカーとして使われている。ヒトにおいても同様な状況で,CD5やCD24,D38の発現を利用する報告もあるものの,IL-10産生性がマーカーとして使われているのが現状である。がんにおいてはBregの浸潤とCD4+CD25+D127lowまたはFoxP3+CD4+ で定義されるTregの増加との相関が示されているが,今後のさらなる解析が必要と思われる12)。(7)制御性T細胞(regulatory T cell:Treg) 従来,Tregは自己免疫寛容や生体の恒常性維持に重要な働きをしている。ヒトではCD45RA陰性・FoxP3強陽性の分画に強い免疫抑制活性が認められ,腫瘍局所に多く浸潤している。上述のようにIL-10やTGF-βがTregの誘導や維持に関わっている。詳細
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