2 irAEの診断方法については,臓器特異的な症状や検査値異常がある場合には障害臓器の推定は比較的容易である。例として,下痢→腸,呼吸困難や咳嗽→肺,トランスアミナーゼ上昇→肝臓となる。続いてirAEと類似した病態の鑑別が必要である。主な鑑別点としては「がん自体の進行」,「感染症の合併」,「併用薬の副作用」が挙げられ,これらを除外していくことが重要である。肺臓炎,下痢・大腸炎,肝障害の鑑別を表1に示す。一方,■怠感・発熱・意識障害といった臓器非特異的な症状の場合には早期診断が難しいこともあり,医療者側が内分泌障害をはじめ各種障害鑑別診断を把握し,より系統的な鑑別診断する必要となる。ごくまれではあるが意識障害をきたしうるirAEとして,劇症1型糖尿病,副腎不全,脳炎,中枢神経の脱髄,(肺臓炎などによる)低酸素血症,腎不全などがあるため注意を要する(図2)。3 推奨されるirAEの治療は重症度によって異なるため,まず重症度の評価が重要である。重症度はCommon Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)v5.0を用いてGrade1〜4で評価することが一般的である。NIH2),もしくは,翻訳版であれば日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)3)のホームページを参照されたい。 原則として図3に示すようにGrade 2以上のirAEが出現すれば,投与を中止し,全身ステロイド投与を検討する。再燃を防ぐため,原則ステロイドのテーパリングは週単位で行い,ステロイド投与は4週間以上かけて行う。例外的に,1型糖尿病,下垂体不全,腸■孔時などステロイドを用いることが推奨されないirAEがあることに注意が必要である。また,ステロイドはirAEの経過に合わせて漸減・中止を目標にするが使用が長期間(≧1カ月以上)に及ぶ場合にはステロイド糖尿病や日和見感染などにも注意し,ST合剤などの予防投与についても検討する。臨床的にST合剤が使用しにくい状況では,アトバコンが代用を検討する。さらに,頻度は低いものの進行期の固形がん患者であっても長期的にステロイドや他の免疫抑制薬を使用する際には,患者の全身状態を考慮して,真菌感染表1 irAEの鑑別診断臓器特異的126第2章 がん免疫療法なirAE肺傷害肺転移,がん性リンパ管症閉塞性肺炎,細菌性肺炎,下痢・腸炎肝障害肝転移,腫瘍による胆道閉塞ウイルス性肝炎,肝膿瘍他剤による薬剤性肝障害がん自体の進行非定型肺炎,日和見感染症他剤による薬剤性肺障害緩下剤による下痢,抗菌薬による下痢(偽膜性腸炎)感染性下痢鑑別診断感染症の合併併用薬剤の副作用(金原史朗,北野滋久:Medicina.54(8):1278-1281,2017.を改変)irAEの診断irAEの治療法
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