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◉採用文献の概要  本臨床疑問に関するシステマティックレビューの結果,システマティックレビュー論文2件,ランダム化比較試験2件(二重盲検ランダム化比較試験1件,非盲検ランダム化比較試験1件)を採用した。なお,文献検索を行うにあたり,本臨床疑問の対象患者を,がん患者の気持ちのつらさのうち,操作的診断基準で不安障害や抑うつ障害群などの診断がつくもの,もしくはHospital Anxiety and Depression Scale(HADS)やHamilton Anxiety Scale(HAM-A),Hamilton Depression Scale(HAM-D)などの不安や抑うつのスケールがカットオフ値以上であるなど,いわゆる閾値以上の気持ちのつらさを有する患者とした。本臨床疑問のアウトカムとして,不安,抑うつ,全般的な気持ちのつらさ,生活の質(quality of life:QOL),214 〈留意事項〉 本臨床疑問における「閾値以上の気持ちのつらさ」の定義については本章冒頭(P212)を参照されたい。 本臨床疑問は,「閾値以上の気持ちのつらさ」を有する成人がん患者を対象に,気持ちのつらさの軽減を目的として抗不安薬を使用する状況を想定して設定したものである。推奨は,「閾値以上の気持ちのつらさ」を有する成人がん患者を対象とした研究に基づいて作成した。 本臨床疑問で対象とした介入は,抗不安薬による薬物療法である。抗不安作用をもつ薬剤には,ベンゾジアゼピン系抗不安薬,セロトニン作動性抗不安薬,抗ヒスタミン薬のヒドロキシジンなどがあり,それらを広く検索の対象とした。その結果,本臨床疑問に関連する研究は,ベンゾジアゼピン系抗不安薬のみであった。抗不安薬には多くの種類があり,その特性や使用上の注意点についてはⅡ章-8「薬物療法」(P115)を参照されたい。 本臨床疑問に関するベンゾジアゼピン系抗不安薬の知見は限定的であったが,ベンゾジアゼピン系抗不安薬はわが国において,うつ病や心身症,神経症における不安,緊張,抑うつ,睡眠障害などを適応症としており,本推奨文は,そのような目的で抗不安薬を使用することを妨げるものではない。 介入の前提として,Ⅱ章-7にある「すべての医療者が実践すべき対応」を実施すること。閾値以上の気持ちのつらさを有する成人がん患者に対して,気持ちのつらさの軽減を目的として,抗不安薬を投与することを提案する。ただし,本ガイドライン総論や他の臨床疑問の内容を踏まえ,患者の価値観や各施設の実施可能性を勘案して個別的なケアも検討し,抗不安薬を使用する場合もこれらと組み合わせることが望ましい。また,長期的な使用は避けることが望ましい。※この推奨文の適用にあたっては,以下の留意事項を必ず参照すること■推奨の強さ:2(弱い)■エビデンスの確実性(強さ):D(非常に弱い)臨床疑問1閾値以上の気持ちのつらさを有する成人がん患者に対して,気持ちのつらさの軽減を目的として,抗不安薬を投与することは推奨されるか? ▶推奨文

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