表4 各不安障害や類縁疾患の概略パニック障害 パニック発作(顕著な交感神経亢進症状)の繰り返し 身体症状(交感神経症状)に起因する,死や病気,コントロールを失う恐怖 パニック発作を起こしそうな状況の回避社交不安障害 対人場面における,他人からの否定的な評価への恐怖 社交場面,公共場面,他者からの注目を集める場面の回避全般性不安障害 日々のさまざまな出来事に誘発される,良くないことや脅威的なことが起こることについての恐怖心的外傷後ストレス障害(PTSD) 命に関わるような強い恐怖を伴う出来事(トラウマ:心的外傷)の後,それに対する心理反応が続 〓文 献 1) 日本精神神経学会 日本語版用語監修,髙橋三郎,大野裕 監訳.DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル.医学書院,東京,2014 これらの特定の不安障害,およびその類縁疾患に対しては,薬物療法〔主として,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor:SSRI)。時に,ベンゾジアゼピン系抗不安薬〕と,精神療法(心理療法,サイコセラピー)(主として認知行動療法)が用いられる2)。1) 定義 適応障害とは,ストレス要因に起因して,抑うつ,不安,行動の障害などを呈する精神障害である。症状の程度や持続期間が,ストレス要因に対する一般的な反応を逸脱していて,機能障害が生じている(その人本来のあり方よりも生活上できることが減っている)場合に診断される。特定のストレス要因との時間的関連が認められる(一般的にはストレス要因の始まりから3カ月以内)。 ストレスは原因となる要因と個人の特性が組み合わさって生じるものであり,ある人にとっては問題ない出来事が,別の人にとっては大きなストレスになりうる。ストレス要因には,病気や離別などの急性の要因と,過重業務や人間関係のあつれきなど,慢性・持続性の要因がある。昇進や結婚などといった一般的には喜ばしいと考えられる出来事も,生活や責任に変化をもたらすためにストレスとなりうる。(藤澤大介)くこと 再体験症状(トラウマが繰り返しまざまざと思い出される) 回避・麻痺症状(感情鈍麻,トラウマを思い出す物事や状況の回避) 過覚醒症状(不眠,イライラなど,緊張・警戒状態が続く状態)強迫性障害 強迫観念(不合理と認識しながらも繰り返し湧いてくる不快な考え) 例:病気,清潔,形の対称性,計算,魔術的観念,など 強迫行為(強迫観念を打ち消すための儀式行為) 例:洗浄,確認,戸締り,“自分が決めたルール”,など18 2.気持ちのつらさの定義と症状 2) 工藤喬,大野裕 編.日常臨床で使える認知行動療法ハンドブック.中外医学社,東京,20234適応障害
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