10209T
8/16

表1 精神療法が効果的に機能するための専門的アセスメント◆治療者‒患者の信頼関係の構築 ・信頼関係,受容・傾聴・支持・共感◆包括的なアセスメント  1)身体症状のアセスメント   3)認知機能のアセスメント   5)社会・経済的問題のアセスメント 6)パーソナリティのアセスメント  7)気分・感情のアセスメント   9)実存的問題のアセスメント※詳細はⅡ章-7-2「包括的アセスメント」(P104)を参照◆状態や機能の心理学的説明(包括的なアセスメントに基づいて)  ・なぜこのような状態となっているのか? (状態)  ・患者が「できること」「できないこと」は何か? (機能)  ・問題が発生し維持されている仕組みはどのようなものか? (心理学的メカニズム)◆精神療法の適応評価と提示  ・ 数々ある精神療法のなかで,患者が自分の課題と対処する手段が合致していると感じるⅡ章 論目的とした介入である6)。精神療法は,理論的な枠組みに応じて250種類以上の技法があるともいわれており,例えば,「その人が現在もっている資質を十全に活かせるように共感的な態度で声掛けを行っていくことで,患者自身の適応力を上げることを支援する精神療法」として,支持的精神療法がある。また,「物事の受け止め方や対処の仕方に焦点を当てて変容を試み,セルフコントロールの力を高める精神療法」として認知行動療法,「不安などの不快な情動のために意識することのできない心の領域に注意を向け,治療者との関係のなかでそれらを体験し意味づけていくことで,症状の緩和や人間関係の改善を目指す精神療法」として力動的精神療法などがある。その他にも,精神療法としての治療アプローチはさまざまである。4) 精神療法施行にあたって 精神療法が効果的に機能するために,以下の専門的アセスメントと治療関係の構築が必須となる。すなわち,「治療者‒患者の信頼関係の構築」「包括的なアセスメント」「心理学的状態と機能の評価」「精神療法の適応評価と提示」が重要となる7)(表1)。また,精神療法施行にあたって,さまざまな柔軟な方法で対応していくための準備が必要で,例えば,問題の理解を家族や他の診療科のスタッフと共有して環境調整を図ることや,身体・認知機能の低下があっても機能しやすい刺激の検討(視覚的・聴覚的手がかり),日常的なケアのなかで尊厳を保つ配慮など,さまざまな工夫を通して患者の精神心理的苦痛や負荷の緩和を図り,精神療法に臨む必要がある8)。5) がん医療で用いられる精神療法の種類 がんという身体疾患の現実的な困難な状況を背景にしていることもあり,一般的に支持的精神療法を基本としながら,さまざまな技法を患者のニーズや臨床像に合わせて複合的に組み合わせる9)ことが実際的である(表2)。がん患者の気持ちのつらさに対する精神療法に対〔平井啓.心理士はこんな仕事―心理士が医師・看護師に知ってほしいこと.緩和ケア2020;30:92‒77)より引用〕ことができる療法の選択と提示 1 がん患者の気持ちのつらさに対する精神療法 1372)脳の機能的変化の可能性4)発達特性・知的水準のアセスメント8)コーピングや疾病の取り組み方のアセスメント総

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る