表2 本ガイドラインで扱った精神療法の種類・リラクセーション法・支持的精神療法・がん患者に対する問題解決療法・精神分析的・精神力動的精神療法・認知行動療法・行動活性化療法・アクセプタンス&コミットメント・セラピー・マインドフルネス・がん患者における集団精神療法・ディグニティセラピー・回想法・ライフレビュー・Managing cancer and living meaningfully(CALM)・Meaning-centered Psychotherapy(人生の意味に焦点を当てた精神療法)・IoTを用いた精神療法して,ランダム化比較試験でその効果が評価されたものとしては,認知行動療法(cognitive behavior therapy:CBT)が多く,そのなかでも,マインドフルネス精神療法(mindfulness-based cognitive therapy:MBCT),アクセプタンス&コミットメント・セラピー(acceptance and commitment therapy:ACT),行動活性化療法(behavioral activation:BA)が報告されている。また,主に終末期のがん患者を対象とした精神療法として,ディグニティセラピー(尊厳療法),ライフレビュー,managing cancer and living meaningfully(CALM),人生の意味に焦点を当てた精神療法(Meaning-centered Psychotherapy)が報告されている。 どんな精神療法を行うにしても,治療を行ううえで重要なことは,「アセスメント」と「患者の心に対する向き合い方」が鍵となり,個々の患者のニードに応じた技法を柔軟に適応していく必要がある。6) 精神療法の効能 精神療法の効果として,抑うつ,不安,QOL,全般的な気持ちのつらさ(general psycholog-ical distress)の改善が認められている。また,横断的な評価改善だけでなく,副産物として,今後のストレスとの付き合い方や価値観の明確化など,持続する苦痛と共に生きること,成長を促進すること(今よりも適応的で健康的な方向へと変化をもたらす)など,がんと共存し主体的に生きていくための術を身につけていくことができることが期待されている。7) 精神療法の限界と配慮 精神療法には,当然ながら限界があり,時には有害な場合さえありうる。例えば,初学者が避けた方がよいケースは,統合失調症や双極性障害,心気症など精神病性の精神疾患が基盤にある患者,自傷・自殺の既往やパーソナリティ障害などの精神疾患が基盤になる患者である10)。特に,精神病性の精神疾患患者は,精神療法による洞察や自己開示,もしくは過去を振り返ることを促す介入によって,混乱や再発を招きやすくなるため注意が必要で,精神療法を行う前に包括的なアセスメントが求められる所以である。138 9.非薬物療法
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