がん免疫療法の分類と作用機序1免疫チェックポイント阻害薬11表1 がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の承認状況とによりADCC活性をなくした抗CTLA‒4抗体は,腫瘍中のTregを除去できず,抗腫瘍効果を示さないことが報告されている9,10)。このようなCTLA‒4による強力な免疫抑制作用は,CTLA‒4欠損マウスによっても示されており11),CTLA‒4欠損マウスはT細胞が全身の臓器に浸潤して,移植片対宿主病(graft‒versus‒host disease:GVHD)様の症状を起こして若年齢で死亡する。また,1996年には,動物モデルにおいてCTLA‒4阻害による抗腫瘍効果が明らかとなった12)。しかしながら,免疫原性の低い腫瘍モデルでは,抗CTLA‒4抗体薬単剤では抗腫瘍効果がみられない報告もあった13)。 現在,臨床現場で用いられている完全ヒト型抗CTLA‒4抗体薬イピリムマブについては,複数のがん種において腫瘍縮小につながることがこれまでの臨床試験の結果から示されている。最初に,悪性黒色腫を対象とした,gp100ペプチドワクチンとの併用療法の第Ⅰ相試験が行われた後14),第Ⅲ相試験でOSの有意な改善が確認され15),2011年に(2023年1月16日現在)分類抗CTLA‒4抗体薬イピリムマブトレメリムマブ非小細胞肺癌,肝細胞癌抗PD‒1抗体薬ニボルマブペムブロリズマブ悪性黒色腫,非小細胞肺癌,腎細胞癌,頭頸部癌,食道癌,乳癌(トリプルネガティブ),ホジキンリンパ腫,尿路上皮癌,dMMR/MSI‒Hの固形がん,TMB‒Hの固形がん,dMMR/MSI‒Hの結腸・直腸癌,子宮頸癌,子宮体癌肝細胞癌,胃癌,メルケル細胞癌,皮膚扁平上皮癌,悪性リンパ腫皮膚扁平上皮癌,非小細胞肺癌,基底細胞癌dMMRの子宮体癌,dMMRの固形がんcemiplimabdostarlimab抗PD‒L1抗体薬アテゾリズマブ非小細胞肺癌,小細胞肺癌,肝細胞癌デュルバルマブ非小細胞肺癌,小細胞肺癌,肝細胞癌アベルマブ抗LAG‒3抗体薬relatlimab※本表については,病期,投与のタイミングは問わず,免疫複合療法等の併用療法も含む。※国内における未承認薬については,英字表記とする。dMMR:mismatch repair‒deficient(ミスマッチ修復機構の欠損)MSI‒H:microsatellite instability‒high(高頻度マイクロサテライト不安定性)TMB:tumor mutation burden(腫瘍遺伝子変異量)治療薬悪性黒色腫,非小細胞肺癌,腎細胞癌,dMMR/MSI‒Hの結腸・直腸癌,悪性胸膜中皮腫,食道癌肝細胞癌頭頸部癌悪性黒色腫,非小細胞肺癌,腎細胞癌,胃癌,悪性胸膜中皮腫,頭頸部癌,食道癌,ホジキンリンパ腫,dMMR/MSI‒Hの結腸・直腸癌,尿路上皮癌原発不明癌肝細胞癌乳癌(トリプルネガティブ)悪性黒色腫,胞巣状軟部肉腫胆管癌腎細胞癌,尿路上皮癌,メルケル細胞癌悪性黒色腫対象疾患承認状況国内承認米国(FDA)承認未承認承認未承認承認承認承認承認承認承認未承認承認未承認承認承認未承認承認未承認未承認承認承認未承認承認未承認承認未承認承認承認承認未承認承認承認承認承認承認Ⅰ
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