がん免疫療法の分類と作用機序1免疫チェックポイント阻害薬13ケル細胞癌,皮膚扁平上皮癌や縦隔原発大細胞型B細胞型リンパ腫でも承認され,適応の範囲を広げている。また,抗PD‒1抗体薬は多くの治療法との併用効果が検討されており,抗CTLA‒4抗体薬やその他のがん免疫療法薬,細胞傷害性抗がん薬,分子標的薬,血管新生阻害薬,放射線治療などとの組み合わせによる臨床試験が実施され,その一部はすでに承認されている。その詳細については,本章「8.免疫複合療法」(p.28)を参照されたい。その他,cemiplimab,dostarlimab,camrelizumab,sintilimab,tisleli-zumab,spartalizumabといった新たな抗PD‒1抗体薬も開発されてきている。 PD‒L1はPD‒1受容体のリガンドのひとつで,PD‒1に結合してT細胞の活性化を抑制する19)。生体内でPD‒1は活性化したT細胞に限局的に発現している一方で,PD‒L1は末梢組織の実質細胞や血管内皮細胞,活性化した免疫担当細胞(抗原提示細胞やT細胞およびB細胞を含む)に広く発現しており,インターフェロン(interferon:IFN)γなどの炎症性サイトカインにより発現が増強する。また,PD‒L1は多種のがん細胞で高発現しており,1999年にホモロジー検索で同定されたB7‒H1は,PD‒L1と同一分子であることが判明した27)。2002年には,抗PD‒L1抗体によりPD‒1シグナルを遮断することで抗腫瘍効果が得られることが動物モデルで明らかになった25)。 抗ヒトPD‒L1抗体薬としてアテゾリズマブ,アベルマブ,デュルバルマブなどが開発されており,これまでに世界中で多くのがん種に対するさまざまな臨床試験が実施されている。本邦においては,アテゾリズマブは非小細胞肺癌,小細胞肺癌,肝細胞癌,トリプルネガティブ乳癌(国外では,この他に悪性黒色腫,胞巣状軟部肉腫),デュルバルマブは非小細胞肺癌,小細胞肺癌,アベルマブはメルケル細胞癌,腎細胞癌,尿路上皮癌で承認されている。抗PD‒L1抗体薬も抗PD‒1抗体薬同様,他のがん治療薬との併用による多くの臨床試験が実施されている。 4 その他の免疫チェックポイント阻害薬 LAG‒3(lymphocyte activation gene 3)は,1990年に活性化T細胞に発現する分子として同定された。LAG‒3はCD4と構造上類似しており,リガンドである主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex:MHC) class Ⅱ分子と結合する。また,LAG‒3の方がCD4よりもMHC classⅡ分子に対して親和性が高いため28,29),T細胞の活性化を阻害するように働く28)。LAG‒3がCD8陽性T細胞上に発現する際は,PD‒1などの他の抑制分子とともに発現しており,それらのT細胞ではサイトカイン産生能が著しく低いが,これに対し,抗LAG‒3抗体の投与と,PD‒1/PD‒L1伝達経路を遮断することを併用することにより,相乗的に抗原に対する細胞の不応答が解除され,抗腫瘍効果を示すことが動物モデルにおいて示されている30)。また,活性化CD4陽性細胞上に発現するLAG‒3分子を刺激すると,インターロイキン(interleukin:IL)‒2の産生が低下するが,抗LAG‒3抗体の添加によりCD4陽性細胞は持続的に増殖し,サイトカイン産生が増加することが報告されている29,31)。さらに,LAG‒3はTreg上にも発現し,LAG‒3陽性TregはIL‒10やTGF‒β(transforming growth factor‒β)などの抑 3 抗PD‒L1抗体薬Ⅰ
元のページ ../index.html#5