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◉頻度 13 サイトカイン放出症候群 CRSは,抗PD‒1抗体薬や抗CTLA‒4抗体薬による有害事象としてはごく稀である(0.1%未満)。一方,T細胞誘導作用を有する二重特異性抗体療法や腫瘍特異的T細胞であるキメラ抗原受容体発現T細胞(chimeric antigen receptor engineered T‒cell:CAR‒T)療法では,CRSが高頻度であることが報告されている1‒3)。CAR‒T療法では,投与後1~2週間以内に発症し,これは体内でT細胞が増殖する時期と一致すると考えられている。 CRSは,サイトカインの放出により引き起こされる発熱,頻呼吸,頭痛,頻脈,低血圧,皮疹,低酸素症などの症状であり,初期症状としてはインフルエンザ様の症状に類似する4)。多くの症状は敗血症に類似しているため,感染症のスクリーニング(培養検査)と経験的な抗菌薬投与をCRSに対する治療と同時並行して行う。血圧低下や低酸素血症は重症度と関連する症状であり,速やかな治療介入と集中治療室で循環呼吸動態のモニタリングを行う必要がある5)(表1)。 免疫チェックポイント阻害薬単独でCRSを発症することはごく稀であるが,抗PD‒1/PD‒L1抗体薬と抗CTLA‒4抗体薬の併用療法ではCRSの発症報告が増えつつある。免疫チェックポイント阻害薬によるCRSでは,ステロイド療法の効果が不十分の場合にトシリズマブなどの投与も検討される(保険適用外)。 一方,CAR‒T細胞療法ではCRS発現が高頻度かつ重篤化に影響することから,より◉臨床症状と診断◉治療方針Ⅱ.免疫チェックポイント阻害薬の副作用管理96要約 免疫チェックポイント阻害薬によるサイトカイン放出症候群(cytokine release syn-drome:CRS)はごく稀な有害事象である。投与初期に,発熱・低血圧やさまざまな神経症状を引き起こし,ときにサイトカインストームとも称される重篤な反応から多臓器不全に陥ることが報告されており,救命のためには迅速な判断と適切な治療が重要である。解説

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