・ 抗精神病薬または鎮静作用を有する抗うつ薬を用いる。・ 薬剤選択の際には,①可逆性,②サブタイプ,③投与経路,④効果,⑤副作用プロ・ せん妄ハイリスクの場合,あらかじめ頓用指示(不眠・不穏時指示)を出しておく。・ 頓用指示の使用回数をみながら,定時薬の必要性の判断や用量調整を行う。Ⅳ章臨床の手引き 1 . 「終末期がん患者の過活動型せん妄に対する薬物治療の実態」に関する調査研究1,2) 〈調査対象〉 日本緩和医療学会専門医および暫定指導医, 日本サイコオンコロジー学会登録医, 日本総合病院精神医学会専門医, がん診療連携拠点病院の緩和ケアチーム精神症状担当医 以上,計787名 2 . 「せん妄治療の第一選択薬」に関する調査研究3) 〈調査対象〉 日本総合病院精神医学会専門医136名 既に述べたように,せん妄は予防が最も重要であるため,可能な限り早い段階で適切な予防対策を行う。また,がん患者のせん妄治療では,直接因子の除去が最も重要である。すなわち,電解質異常が原因であればその補正が,ベンゾジアゼピン系薬が原因であればその減量・中止が,せん妄改善のためにそれぞれ必須である。そこで,せん妄を認めた際には十分な原因検索を行い,可能な限りそれを除去することが求められる。 実臨床においては,それらを行いながら薬物療法も検討することになる。例えば,高カルシウム血症が原因のせん妄に対しては,カルシウム値を補正するのに日数が必要であり,その間にせん妄の症状が活発なままだと転倒・転落やライン抜去など多くの問題が生じる可能性がある。したがって,せん妄の症状をマネジメントする目的で,抗精神病薬や鎮静作用を有する抗うつ薬などを用いて薬物療法を行う。 本ガイドラインの臨床疑問の推奨文や解説文では,具体的な薬物療法(薬剤選択や投与量など)について十分な解説は行われていないが,実臨床では極めてニードが高いものと思われる。そこで,この改訂版では新たに「せん妄薬物療法の手引き」を設け,がん患者のせん妄に対する薬物療法について,具体的かつシンプルに解説する。なお,この手引きは,以下の2つの調査研究で抽出された薬物などを参考に,本ガイドライン作成メンバーが中心となり,実臨床における用法・用量などを具体的にまとめたものである。フィール(禁忌や相互作用など)などを考慮する。せん妄薬物療法の手引き 131 2 本手引きについて 3 がん患者におけるせん妄の薬物療法についての基本的な考え方
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