・ 薬物療法の漸減・中止のタイミングについては,せん妄症状の改善が得られたか,・ わが国において,せん妄に保険適用を有する薬剤はチアプリド1剤のみであるが,2011年9月に厚生労働省から,クエチアピン(セロクエル®),リスペリドン(リスパダール®),ハロペリドール(セレネース®),ペロスピロン(ルーラン®)の4剤について「器質性疾患に伴うせん妄・精神運動興奮状態・易怒性に対する適応外使用を審査上認める」という通知が出されている。標準量の半分程度から開始することが望ましい。またはせん妄の直接因子が除去された場合を1つの目安とする。薬物名クエチアピン(セロクエル®)・半減期が短く,錐体外路症状のリスクが少ないことから,第一選択で用いられるリスペリドン(リスパダール®)・幻覚・妄想が顕著な場合や,糖尿病のためクエチアピンを用いることができない場合などに用いられるトラゾドン(レスリン®/デジレル®)・せん妄の重症度が低い場合や,抗精神病薬を避けたい場合などに用いられるハロペリドール注(セレネース®注)選択する理由・根拠・鎮静作用が強い・半減期が短く,持ち越しが少ない・錐体外路症状が極めて少ない・幻覚・妄想に対する効果が強い・錐体外路症状が少な・鎮静作用を有する・半減期が短く,持ち越しが少ない・筋弛緩作用が少なく,転倒のリスクが少ない・幻覚・妄想に対する効果が強い・経静脈内投与は錐体外路症状が少ない長所・幻覚・妄想に対する効果は弱い・糖尿病に禁忌・鎮静作用は弱い・腎機能障害では効果が遷延する・せん妄治療に関するエビデンスの確実性(強さ)は抗精神病薬より低い(臨床疑問5,6参照)・鎮静作用が決して強くはないため,興奮が強いせん妄患者には不向き・鎮静作用は弱い・パーキンソン病,重症心不全,レビー小体型認知症に禁忌短所開始用量*25mg0.5mg25mg0.5A(2.5mg)132 ・ 原則として,単剤で少量から開始する。・ 特に,高齢の患者や身体的重症度の高い患者など,脆弱性が懸念されるケースでは,*処方例としては,定時薬として開始用量を夕食後あるいは就寝前1回服用,不眠・不穏時に定時薬と同量で30分~1時間以上あけて2~3回/日まで可とする。表1 せん妄で用いる各薬物の選択理由と特徴(長所・短所)い 4 せん妄で用いる各薬物の選択理由と特徴(長所・短所)についての基本的な考え方・ せん妄で用いる各薬物の選択理由と特徴(長所・短所)について,表1にまとめた(抗精神病薬の薬理学的な特徴については資料P169参照)。・ これらの薬物の特徴に加え,せん妄の活動性,可逆性などを考慮しながら選択するため,それらについて以下に説明する。なおせん妄の活動性については総論P17,可逆性については総論P14を参照のこと。
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