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・ 表1の用量設定や処方例などはあくまでも一例であり,これがスタンダードであるとは決して言い切れない。実際には,これらの薬剤がせん妄に対して適応外使用であることを含めて患者や家族へ十分な説明を行い,年齢や身体状況などを考慮に入れながら,慎重に処方することが望ましい。・ 興奮が強いせん妄では鎮静効果の強いクエチアピンを,幻覚・妄想が顕著なせん妄や糖尿病の既往があるケースではリスペリドンを用いる。ただし,リスペリドンを用いる場合は,腎機能を評価したうえで用量を検討する。Ⅳ章臨床の手引き1) 可逆性かつ過活動型せん妄〔内服が可能な場合〕・ 内服が可能な場合,抗精神病薬のクエチアピン,リスペリドンのいずれかを用いる。また,鎮静作用を有する抗うつ薬である,トラゾドン(レスリン®/デジレル®)を用いることもある。2) 可逆性かつ過活動型せん妄〔内服が困難・不可能な場合〕・ 内服が困難・不可能な場合,主に抗精神病薬のハロペリドール注を用いる。なお,ハロペリドール注で鎮静効果が得られない場合,ベンゾジアゼピン系の注射薬であるミダゾラム注やフルニトラゼパム注の併用を検討する(いずれも呼吸抑制のリスクがあり,呼吸抑制が生じた場合には迅速かつ確実な対応が求められることから,一般病棟で使用する際には十分注意する必要がある。詳細については,添付文書の「重要な基本的注意」を参照のこと)。【不眠・不穏時】  ハロペリドール注5 mg 0.5 A+生食20 mL,側管から緩徐に静注,30分(または1時間)あけて計3回まで使用可能 →静注が不慣れなどの場合は,点滴(定時薬のものと同じ)でも可1時間で投与を終える速度で点滴開始 *入眠したら滴下を止め,覚醒したら滴下再開,を繰り返す *呼吸抑制に十分注意すること * 投与前に救急処置〔アンビューバッグやフルマゼニル注(ベンゾジアゼピン受容体拮抗薬)〕の準備をしておくこと * 投与中はパルスオキシメーターや血圧計などで呼吸・循環動態を継続的にモニタリングすること〈処方例①〉【定時薬】  ハロペリドール注5 mg 0.5 A+生食50 mL,○時から30分(または1時間)かけて点〈処方例②〉  ハロペリドール注5 mg 1 A+フルニトラゼパム注2 mg 0.5 A+生食50 mL,20時から,滴せん妄薬物療法の手引き 133

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