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[採用文献の概要] 本臨床疑問に関する臨床研究としては,がん患者を対象とした観察研究*が1件あった。非がん患者を対象とした研究についてもレビューを行ったが,システマティックレビュー・メタアナリシス,無作為化比較試験は同定できなかった。 Maedaら1)は,緩和ケアを受けていてせん妄を有するがん患者818名のうちトラゾドンが投与された患者38名(過活動型せん妄14名,低活動型せん妄12名,混合型4名,分類不能8名)を対象に,トラゾドンの投与3日後においてせん妄が改善するかを多施設の前向き観察研究の二次解析によって検討した。トラゾドンが投与された患者のうち5名はベンゾジアゼピン系薬,10名はラメルテオンが併用投与されていた。その結果,トラゾドン(投与量中央値37.5 mg/日)投与3日後のDRS-R-98の合計スコアが有意に改善した。また,下位スケールでは,睡眠覚醒サイクル,情動の変容,運動性焦燥で有意な改善がみられた。安全性については,トラゾドン投与後7日間に11名で計16件の有害事象(眠気9名,転倒・転落2名,誤嚥性肺炎2名など)が報告されたが,トラゾドンとの因果関係が疑われる有害事象は,眠気が4名,誤嚥性肺炎,血小板減少,めまいが各1名であった。[解 説] 上記記載のように,がん患者のせん妄に対するトラゾドン投与については,1件の観察研究で有効性や安全性が報告されているのみであった。 一方,非がん患者も対象に含めた観察研究において,せん妄に対するトラゾドンの有効性や安全性,臨床現場での使用状況について,以下のような報告を認めた。 Okamotoらa)は,せん妄を有する入院患者7名(うち,がん患者2名)(過活動型せん妄5名,混合型せん妄2名)を対象に,せん妄に対するトラゾドンの有効性を検討した。2名は既に投与されていたベンゾジアゼピン系薬にトラゾドンが追加投与され,96 せん妄を有するがん患者に対して,せん妄の症状軽減を目的として,トラゾドンを単独で投与することを提案する。■推奨の強さ:2(弱い)■エビデンスの確実性(強さ):D(非常に弱い)*本ガイドラインでは,横断的観察研究,後ろ向き観察研究,前向き観察研究,非対照試験(無作為化比較試験の単アーム利用も含む)を観察研究と定義した。臨床疑問6せん妄を有するがん患者に対して,せん妄の症状軽減を目的として,トラゾドンを単独で投与することは推奨されるか?▶▶推奨文

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