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ス21章ESDアトラ一般的な内容は既に多くの書籍,総説がある。実際には,それらではカバーできない困難例や困難状況が多数存在する。また,データで括ると埋もれがちな悩ましい症例も多い。実臨床ではこうした挑戦を求められる症例に,多くの時間や労力を割いているのが現状である。そのような症例をすべて取り上げることは困難だが,本書では可能な限り取り上げることにした。限界への挑戦を考えるうえでは,根治性の限界,技術的限界,実現可能性の限界の3点を勘案することが必要である。ESDは所詮局所切除に過ぎない。したがって,転移を伴わない病変という根治性の限界が存在する。若干の適応拡大や放射線化学療法との併用が議論されているものの,大幅な適応拡大の余地はなく,むしろ正確な病理組織診断を可能にする切除標本の質への挑戦が続いている。技術的限界,実現可能性(feasibility)の限界は熟知しておく必要がある。未だに「切除不可能と思われる」,「狭窄の解除が困難」などの理由で安易に経過観察や手術に回っている症例は少なくないのではなかろうか。一方で,偶発症の対処法,狭窄対策や遅発性穿孔への十分な備えなく切除を試みている例が見受けられる。ESDを中止され,当方に紹介・相談される症例を責める気は毛頭ない。勇気を持って撤退されたことに,いつも敬意を表している。しかし,自身の技量と難易度の評価をおろそかにしたり,偶発症対策を熟知せず患者に不利益を与えるようでは無責任と言わざるを得ない。そういう筆者自身,漠然とした予測に基づいて手を出してきた際どい症例がある。教訓的な症例もあえて紹介した。技術的限界はどこなのか,実現可能性はどうか,特に狭窄に関しては部位により大きく異なる。ESDを啓蒙してきた者の責務として現時点の限界および問題点を示すことも本書の目的の一つである。そして,それらは今後克服されるべき課題である。本書の初版ではこだわりなく処置具を使い分けることを提案した。しかし現在では全例FlushKnifeで先発し症例に応じて方法,テクニック,アクセサリーデバイスを使い 1 困難例・限界例への挑戦1-12) 2 提示症例の選択1.序説総論

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