3分けるスタイルに変容している。他のESDナイフは稀にHookナイフやClutchCutter を併用するのみである。ESDの方法は従来法,トラクションデバイス併用法,ポケット法の3つに大別される。病変や状況に応じてどの方法が良いか常に考察してきた。本書ではそれぞれの特徴を示すため,可能な限り3つの方法で施行した症例をそれぞれ提示するようにした。また,ライブ症例を極力選択した。見栄えのする症例は他にもあるが,画像の選択や動画の編集には主観が入りやすい。ライブ症例でありのままを示し,読者自身でも確認・評価・考察できるべきであると考えた。提示した戦略は最適・正解とは限らない。過去のものとなった手技・手順もある。どういう意図や考え方に立脚していたか,今ならどうするかなど,なるべく追記するように心がけたが不十分である点はご容赦いただきたい。また,ライブ症例では随所に言い間違いや不十分な解説シーンがあると思われる。適宜高所から修正,行間を読んでいただけるようお願いする。スコープやフードの選択,アクセサリーデバイスにはかなりこだわりと考えを持っており,高周波手術装置の効果的な使い方については自身の中心的なテーマの一つである。他誌・他稿で詳述した内容については加筆・修正し,本書でも取り上げた。ESDはより確実な内視鏡的切除を求めて,ERHSE法1)を発展させる形で開発された2)。EMRがスネアを用いる,いわばポリペクトミーの延長であったのに対し,ESDは病巣周囲粘膜を全周性に切開し,粘膜下層を直視下に剥離する外科的手法の応用といえる。理論的には病変の大きさ,場所,形態によらず内視鏡的一括切除を可能にする画期的な方法である。しかし,EMRが比較的容易・安全かつ短時間で施行できるのに対し,ESDは難易度・偶発症の発生頻度が高く,長時間を要するという問題がある。また,大型病変や瘢痕を伴う病変,さらには粘膜下層癌にまで適応が拡大された今日,根治性の評価は重要な課題である。画像強調技術の進歩により,病変の境界診断の精度は飛躍的に進歩した。しかし,根治性の評価に重要な浸潤距離・様式や脈管侵襲の有無を確実に術前診断できるモダリティーは現在のところ存在しない。根治性は,切除後の病理組織診断に基づいて判断しているのが現状である。したがって,これらを的確に評価できる,質の高い切除標本を得る必要がある。ESDは主に粘膜切開と粘膜下層剥離の2つのステップで構成されている。いずれも1.序説2.ESDの原理とクオリティコントロール 1 適切な切開・剥離深度と困難例の対処3-7) (図1-2-1-1))<適切な切開・剥離深度の定義>
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