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ス序2章ESDアトラ120食道は壁が薄く外膜がないため胃と比較して安全域が狭い。筋層が露出しただけで縦隔気腫が発生し,穿孔は極めて重篤な経過をたどることがある。さらに拍動,呼吸により対象が常に変動している。このような背景から食道におけるESDは困難例と考えられてきた。しかし,経験数の増加,各種デバイスの普及から特殊な要因を伴わない症例では困難性を感じなくなってきている。むしろ術中の患者管理,術後狭窄対策の方が問題といえる1-5)。困難要因としては,頸部や下咽頭など部位の問題,ESD後瘢痕にかかる病変やCRT後の再発病変,静脈瘤合併例,憩室や筋層欠損例などが挙げられる。また,Barrett食道腺癌ではEGJの処理が必要となることが多く,Stepwise ESDなどはさらに難易度が高い6, 7)。アカラシアには食道表在癌の合併に注意する必要がある。これら困難例・特殊症例に対するESDの是非は議論のあるところであるが,積極的に食道ESDを施行していると遭遇する症例であり,本書ではあえて取り上げることにした。周在性に応じて片側粘膜フラップ(C字切開・剥離)か両側粘膜フラップかを決める。半周程度までの切除範囲であれば,片側フラップとするので十分である。それ以上は水没領域の対側の粘膜下層を残すように両側フラップを形成するのが効率的である。まず水没領域に近い方の粘膜切開・切開縁のトリミングを行う。形成された溝に沿って,口側から肛門側に向かって縦方向に1回剥離(トリミング)すると,1/4周程度の剥離が終了する。2/3周性までの周在性であれば,切開縁のトリミングと1〜2回の縦方向剥離を終えると,たいていの場合は残りわずかな剥離を残すのみとなる。いずれの場合も口側から肛門側へ縦方向に剥離を追加し,粘膜下層が縦方向に残存するようにデザインすることがコツである1, 2)。1.基本症例 1 従来法:CFM食道

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