▋アウトカム1:呼吸困難の緩和 本臨床疑問に関する臨床研究として,無作為化比較試験7件が同定された。 Yamaguchiら(2018)1)の試験では,呼吸困難を伴うがん患者17名を,モルヒネ群(定期内服オピオイド1日量の10〜20%量の速放性製剤)とオキシコドン群(定期内服オピオイド1日量の10〜20%量の速放性製剤)に無作為に割り付け,呼吸困難強度を評価した。目標症例数は100名であったが割り付け,試験を完遂されたのは17名にとどまった。評価項目である60分後の呼吸困難NRS(0〜10)の変化において,オキシコドンのモルヒネに対する非劣性は証明されなかった(平均差0.75,95%CI −0.89■2.39)。 Simonら(2016)2)の試験では,呼吸困難を伴うがん患者10名を,モルヒネ群(定期内服オピオイド1日量の1/6量の速放性製剤)とフェンタニル群(バッカル錠:100〜600μgで至適用量を決定して使用)に無作為に割り付け,クロスオーバーさせて突出的な呼吸困難強度をNRS(0〜10)で比較した。30分後の呼吸困難強度(変化値)は両群で有意差を認めなかった(平均差1.0,95%CI−0.9■2.8)。 Naviganteら(2010)3)は,外来通院中の呼吸困難を有するがん患者63名を,ミダゾラム群(効果的投与量の経口ミダゾラムを4時間毎に定期投与)とモルヒネ群(効果的投与量の経口モルヒネを4時間毎に定期投与)に無作為に割り付け,呼吸困難強度を評価した。試験開始5日目までに呼吸困難NRSが8以上にならなかった患者の割合が評価されたが,群間比較は行われなかった。また,試験開始2日目の呼吸困難NRSはモルヒネ群と比較してミダゾラム群で有意に低かった(p=0.003)。 Naviganteら(2006)4)は,予測される生命予後が1週間以内である重度の呼吸困難を有するがん患者101名を,モルヒネ単独投与群〔モルヒネ皮下注2.5 mgを4時Ⅲ 章推 奨2がん患者の呼吸困難に対する解 説 本臨床疑問ではアウトカムとして,呼吸困難の緩和,QOLの向上,傾眠,重篤な有害事象を設定した。131推奨の強さ:1(強い推奨)エビデンスの確実性:B(中程度) (強い推奨,エビデンスの確実性は中程度)2 がん患者の呼吸困難に対する薬物療法1B臨床疑問4-1呼吸困難を有するがん患者に対して,モルヒネ全身投与は有用か?推 奨 がん患者の呼吸困難に対して,モルヒネ全身投与を行うことを推奨する。薬物療法
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