Ⅲ 章推 奨1進行性疾患患者の呼吸困難に対する解 説 本臨床疑問ではアウトカムとして,呼吸困難の緩和,運動耐容能の向上,QOLの向上,意識障害・傾眠,不快感を設定した。 本臨床疑問に関する臨床研究として,無作為化比較試験5件が同定された。▋アウトカム1:呼吸困難の緩和 呼吸困難の緩和を検証した研究は5件が同定された。 安静時呼吸困難に対する酸素の効果を検証した研究が3件あった。 Mooreら(2009)1)は,慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者51名を対象として閉鎖回路で酸素または空気の吸入を行い,修正Borgスケールにより安静時呼吸困難を評価するクロスオーバー試験を行った。安静時の低酸素血症により在宅酸素療法の適応のあるCOPD患者9名のサブグループでは,5分間の吸入後の呼吸困難は両群間で有意差を認めなかった(p=0.347)(図1)。ただし安静時呼吸困難の程度は両群とも軽かった(修正Borgスケールの平均は酸素1.5,空気1.6)。 Brueraら(1993)2)は,低酸素血症に対して酸素療法が行われている進行がん患者14名に,酸素飽和度が5分間安定するまで酸素または空気5 L/分をマスクで吸入してもらい,吸入前後の安静時呼吸困難をVASで測定した。空気吸入に比べて,酸素吸入では呼吸困難が有意に改善した〔空気と酸素の差20.5,95%信頼区間(CI)13.5■27.6,p<0.001〕(図2)。 Philipら(2006)3)は,51名の進行がん患者を対象として,酸素または空気を吸入(鼻カニュラ4 L/分,15分間)した後の安静時呼吸困難をVASで評価し比較するクロスオーバー試験を行った。17名の低酸素血症を有する患者のサブグループでは2つの介入の間で有意差を認めなかった(p=0.812)。標準偏差が不明のため統合はできなかった。 運動負荷時の呼吸困難に対する酸素の効果を検証した研究が1件あった。97推奨の強さ:2(弱い推奨)エビデンスの確実性:C(低い) (弱い推奨,エビデンスの確実性は低い)1 進行性疾患患者の呼吸困難に対する非薬物療法2C臨床疑問1-1安静時低酸素血症があり呼吸困難を有する進行性疾患患者に対して,酸素吸入を行うことは呼吸困難の緩和に有用か?推 奨 安静時低酸素血症があり呼吸困難を有する進行性疾患患者に対して,酸素吸入を行うことを提案する。非薬物療法
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