Ⅴ 章*1回の早送り(追加投与)量は0.5~1mg程度から開始し,患者の状態と効果を観察しながら早送り量を調節する。静注の場合,早送りは1分程度かけて緩徐に投与し,Tmaxは6分程度であるため早送り後10分間は慎重に観察する。持続的深い鎮静の導入期では10分程度間隔をあけて必要に応じて早送りを繰り返してもよい。その際の総量は2~3mg程度を目安とする。皮下注の場合,Tmaxは20~30分程度であるため,20分程度間隔をあけて必要に応じて早送りを繰り返してもよい。#苦痛が早送り1,2回のみで和らぎ持続しない場合は,持続投与量は必ずしも増量しなくてもよい。†ローディングドーズ(負荷投与)は,目的とする治療効果が得られたあとに減量することを前提としている。ローディングドーズ開始からローディングドーズを終了するまでの期間は,特に注意深く観察する必要がある。$フルマゼニルの投与方法については,Ⅳ章—4「間欠的鎮静」の注2を参照。6 実際の投与方法と評価・ケア表1 持続的鎮静に用いるミダゾラムの使用例[注5]調節型鎮静・15~30分毎を目安に,目標(苦痛緩和)が得られているかと,全身状態の変化を評価する。・苦痛緩和が得られない場合は,0.5~1mg程度の早送り*を行い,持続投与量を数時間毎に30~50%を目安に増量する。患者の状況#によっては,早送りのみを行い持続投与量は増量しないで経過をみる。維持・いったん苦痛緩和が得られた場合は,数時間毎に評価を行う。・苦痛緩和が不十分な場合は,早送り*を行い,持続投与量を数時間毎に30~50%を目安に増量する。患者の状況#によっては,早送り*のみを行い持続投与量は増量しないで経過をみる。・苦痛緩和が得られたが鎮静が深くなりすぎた(鎮静を浅くすることが適切と考えられた)場合,持続投与量の減量,中止を行う。場合によっては,拮抗薬(フルマゼニル)$の投与を検討する。持続的深い鎮静107することが重要である。特に,ミダゾラムの必要量は個人差が非常に大きいため,投与量,増量・減量間隔,増量・減量幅は患者の状況(体重や全身状態)に応じて適宜調節する。 薬剤投与中の患者の状態や苦痛の評価についての考え方は「鎮静中の継続的な評価」の項(P109)を参照。 患者の全身状態によっては(鎮静薬による影響は医学的に明確にはできないが,結果的に),鎮静薬の投与直後に患者が死亡する場合がある。かといって,危険性を強調しすぎミダゾラムの投与方法の例を調節型鎮静と持続的深い鎮静に分けて記載している。調節型鎮静でのみ鎮静薬の投与量の調節が必要で,持続的深い鎮静では投与量の調整が必要ないという意味ではない。持続的深い鎮静においても調節が必要である。深い鎮静状態に導入・維持することだけに注目するのではなく,患者の状態や苦痛の程度にあわせて鎮静薬を調節して投与する。苦痛が再燃しない範囲で鎮静薬を減量できないかを常に検討することが必要である。調節型鎮静の維持量は0.5~5mg/時間(通常1~2mg/時間)である。持続的深い鎮静の使用例として想定したのは,窒息や気道出血などの緊急時にできるだけ速やかに深い鎮静に導入するような場面であり,その方法の一例を示している。持続的深い鎮静の適応と考えられる場合でも,緊急ではない場合にはより少量の投与量で十分な鎮静を得られる場合がある。ミダゾラムは本来体重あたりの投与量を書くことが一般的であるが,使いやすさを重視して/kgではなく/bodyで表記した。導入・0.5~1mg/時間で持続皮下・静注を開始する。投与開始時に0.5~1mg程度の早送り(追加投与)*を行ってもよい。・ローディングドーズ(負荷投与,通常は数時間)†として3~5mg/時間で持続皮下・静注を開始する。投与開始時に0.5~1mg程度の早送り(追加投与)*を行ってもよい。苦痛が軽減できない場合,早送り*を苦痛が緩和するまで繰り返し行ってもよい。・15~30分毎を目安に,目標(深い鎮静)が得られているかと全身状態を評価する。・深い鎮静が得られない場合は,0.5~1mg程度の早送り*を行い,持続投与量を30~50%を目安に増量する。深い鎮静になかなか導入できない場合は,10mg/時間までを目安に増量する。・目的とする鎮静水準に到達すれば,持続投与量を1/2~1/3に減量して継続する(ローディングドーズ†の終了)。・いったん深い鎮静が得られた場合は,数時間毎に評価を行う。・鎮静が不十分になった(深い鎮静が得られなくなった)場合は,早送り*を行い,持続投与量を数時間毎に30~50%を目安に増量する。患者の状況#によっては,早送り*のみを行い持続投与量は増量しないで経過をみる。・苦痛緩和が得られたが鎮静が深くなりすぎた(鎮静を浅くすることが適切と考えられた)場合,持続投与量の減量,中止を行う。場合によっては,拮抗薬(フルマゼニル)$の投与を検討する。・深い鎮静を目的として鎮静薬の投与を開始したが,鎮静薬を調節する過程で十分な苦痛緩和が得られた場合には,目的を持続的深い鎮静ではなく調節型鎮静に変更することを検討する。・深い鎮静に導入した後に,深い鎮静を中止しても患者の苦痛が再燃せず不利益とならないと考えられる場合には,調節型鎮静へ切り替え,鎮静薬を調節(必要に応じて減量・中止)する。
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