Ⅷ 章CQ8 患者・家族は意思決定にどのように参加しているか157CQ8患者・家族は意思決定にどのように参加しているか 患者・家族が鎮静に同意した頻度を,間欠鎮静を含む/広い意味での鎮静またはCDSに限らない持続鎮静,CDSに分けて算出したものを図8に示す。患者が同意している頻度は,それぞれ,32%(30—35),59%(53—65)であり,家族が同意している頻度は,それぞれ,93%(92—95),94%(90—97)であった。患者に同意を取得していない理由は,認知障害(せん妄),患者の全身状態が極端に悪いこと(too serious)が主であった(CQ1:表1参照)。解釈 鎮静を行う場合には患者の半数程度から同意が取得されており,家族からはほとんどの場合で同意が得られている。鎮静が行われる状況では,患者はせん妄状態であることが多く,意思決定能力がない場合が多いことから,患者への同意の取得が半数程度であるのは説明できる。このなかには,「患者が病状を受け入れられる状態になるのを待っていたら,説明する機会がないまま病状が悪化してせん妄となった」「治療抵抗性の苦痛を生じたらどうするかをあらかじめ話し合っておいたほうがよいと周囲は考えていたが,患者に話を切り出すタイミングを先延ばしにしてきたまません妄になった」状況も考えられる。一方,「患者の全身状態が極端に悪いこと」は,患者にとって鎮静の説明を明確にすることが善であると臨床的に考えなかった場合(患者の不安が強い,それまでの病状に気持ちが追い付いていない,病状の詳細の説明を希望しないなど)があると想定されるが,詳細は明確ではない。患者自身と鎮静について説明できた患者では,鎮静の実施率が高かったとの研究があり,それまでの病状の受け入れと鎮静の実施との関係が示唆される(Ingra-vallo, 2019)。 患者が意思表示できない場合には,家族から患者の推定意思を得て,意思決定の妥当性を担保する方法は90%以上で行われていると考えられる。
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