102  9 胆道癌

CQ

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CA19-9は胆道癌で予後因子として有用か?

Answer

CA19-9は胆道癌の予後因子として有用である。

解 説

胆道癌において最も用いられている腫瘍マーカーはCA19-9であり,画像診断などで胆道癌

が疑われる場合や手術後の再発の補助診断として利用される。特異性,感度はそのカットオフ
値をどのように決めるかで異なっている。通常診療でのCA19-9の正常範囲37 U/mlをカット
オフ値とした場合と100 U/ml以上とした場合では,特異性も感度はやや異なる(

表2

3-10)

。な

お,CA19-9はルイス式血液型の血液型糖鎖抗原であるルイス A糖鎖にシアル酸が付いたシア
リルルイスA抗原と同一であり,正常範囲の上限は個人のルイス式血液型による影響を受け

11, 12)

。したがって,カットオフ値37 U/mlより軽度の上昇や測定感度以下といった値をとる

場合には注意が必要である。

CA19-9は,癌の存在や再発の補助診断の他に

表3

に示したように予後因子としても有用で

あるとの報告

13-18)

もあり,化学療法などの大規模臨床試験における層別因子として利用される

場合もある

19)

なお,CA19-9は,胆道癌で並存することが多い胆汁うっ滞,胆管炎や胆嚢炎などの炎症変

20, 21)

,黄疸

22, 23)

を認める場合は偽陽性を示すことがよく知られているので,このような病態

を認める場合は,1回の測定だけで診断の補助とすべきではない。同様に,日本人の約10%を
占める真のルイス式血液型陰性者ではシアリルルイスA抗原を作ることができず,CA19-9は

表1 

実臨床で使用されている胆道癌の腫瘍マーカー

腫瘍マーカー

主な対象癌種

特  徴

CA19-9

膵癌,胆道癌,胃癌,大腸癌

シアリルルイス A抗原。ルイス血液型の影響あり

CEA

大腸癌,胃癌,膵癌,

甲状腺髄様癌

癌胎児性抗原。肝機能,甲状腺機能の影響あり

DUPAN-2

膵癌,胆道癌

シアリルルイスC抗原。胆管炎,黄疸の影響あり

Span-1

膵癌,胆道癌

シアリルルイス A抗原類似抗原。肝炎,肝硬変の影響あり

CA50

膵癌,胆道癌

シアリルルイス A抗原類似抗原。透析,肝硬変の影響あり

SLX

卵巣癌,子宮頸癌,胃癌,

胆道癌,膵癌,肺癌

シアリルルイスX-Ii抗原。肝炎,肝硬変の影響あり

NCC-ST-439

膵癌,乳癌,大腸癌,肺癌

SLX類似抗原。肝炎,肝硬変の影響あり

STN

卵巣癌,子宮頸癌,胃癌,

胆道癌,膵癌

シアリルTn抗原。婦人科疾患,肝硬変の影響あり

CA125

卵巣癌,子宮体癌,胆道癌,膵癌

MUC16。子宮内膜症,腹膜炎,胸膜炎の影響あり

注1)検査キットにて異なる。注2)男性と50歳以上の女性