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質を持ち,繊細な突起を星芒状に伸ばす腫瘍細胞(古典的な組織像で,従来,fibrillaryas-

trocytoma原線維性星細胞腫と呼ばれてきた亜型に該当する)がびまん性に増殖する(

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)。これまで腫瘍細胞の形態に基づいて3つの細胞亜型が区別されてきたが,亜型間

の重複が多いことから,gemistocyticastrocytoma,

IDH-mutantのみを独立させ,その他

の亜型分類は使用しないことになった。核には大小不同,クロマチンの増量などがみられ

るが,核分裂像は定義上ほとんどみられてはならない。間質にmicrocysticdegeneration

微小囊胞変性を伴うことがある。腫瘍の浸潤部で腫瘍細胞が神経細胞の周囲,血管の周囲,

軟膜下,脳室上衣下などに集積する像はSchererʼssecondarystructure(Schererの二次構

築)と呼ばれる。有髄線維間に浸潤する腫瘍細胞が双極性の細長い形態をとる所見ととも

に,浸潤性グリオーマに共通してみられる所見である。

免疫組織化学的には,GFAP,S-100蛋白の陽性反応に加えて,IDH1変異特異抗体(

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),p53陽性(一般に腫瘍細胞の10%以上が強陽性の場合に変異ありと判定する)(

2-15

)やATRXの核の染色性の消失(図2-16)が特徴的である。Ki-67標識率はおおむね

低く,4%以下であることが多い。鑑別診断として反応性グリオーシスが挙げられ,免疫

染色所見が参考となる。

a.Gemistocyticastrocytoma,

IDH-mutant肥胖細胞性星細胞腫,

IDH変異(図2-17)

偏在する核と好酸性硝子様の広い細胞質を持つgemistocyte肥胖細胞が主体をなして増

殖するびまん性星細胞腫,IDH変異亜型である(図2-17)。肥胖細胞は通常の星細胞腫に

も出現するが,本亜型の診断には構成細胞の2割以上を占めていることが求められる。類

円形ないし多角形の細胞体からは太く短い細胞突起が伸びている。細胞が血管周囲で偽ロ

ゼット配列を示すこともある。しばしば血管周囲のリンパ球浸潤がみられる。ほかの亜型

より浸潤性の性格が強く,anaplasticastrocytoma退形成性星細胞腫へ悪性転化しやすい

と考えられている。IDH1変異特異抗体に加えて,p53は肥胖細胞を含む腫瘍細胞にびま

ん性に陽性になることが多い。なお,minigemistocyte微小肥胖細胞が多い乏突起膠腫や,

組織型の解説とカラーアトラス

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図2-17

Gemistocyticastrocytoma,IDH-mutant

核が偏在した好酸性の豊かな細胞質を持つ細胞が増殖し

ている。

図2-18

Anaplasticastrocytoma

細胞密度が上昇し,核異型を示す星細胞が増殖している。

核分裂像はみられるが,微小血管増殖は認められない。