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■ 背 景
肝障害度C(Child—Pugh分類C)の肝硬変は,予後不良の末期肝臓病であり,各種
治療への忍容性も低い。このため,肝細胞癌合併のいかんによらず,肝移植のみが予
後に貢献できる治療とされている。しかし,実際の臨床現場では,近年著しく進歩し
た低侵襲な治療が,肝障害度C(Child—Pugh分類C)の肝細胞癌に対して行われてい
る場合も少なくない。そのため,肝障害度C(Child—Pugh分類C)の肝細胞癌に対し
て推奨できる治療について検討した。
■ サイエンティフィックステートメント
1982年1月から2016年6月までに報告された肝障害度C(Child—Pugh分類C)ま
たは末期肝硬変に合併した肝細胞癌の治療成績を含む論文409篇のなかから47篇を一
次選択した。このうち症例数の少ない報告を除外し,治療の対象と選択基準が明確な
4篇を採用した。また,本補訂版より本邦の肝細胞癌に対する生体肝移植の論文が1
篇追加採用された。
Mazzaferroらはミラノ基準内(脈管侵襲と肝外転移なし,単発では腫瘍径5 cm以
下,多発では腫瘍数3個以下で腫瘍径が3 cm以下)の肝細胞癌を対象に肝移植を行
い,Child—Pugh分類C 15例の移植後生存率が1年:93%,3年:93%,4年:80%,
また無再発生存率が1年:93%,3年:86%,4年:86%と,Child—Pugh分類A/Bの
移植成績と同等であったことを報告している
1)
。また,本邦の多施設での肝細胞癌に
対する生体肝移植施行例をまとめた報告では,Child—Pugh分類C 156例の移植後生存
率が1年:75.1%,3年:68.7%,再発率が1年:9.9%,3年:16.1%であり,Child—
Pugh 分類A/Bと同等の成績が示されている
2)
。一方,ミラノ基準内の肝細胞癌に対
する経皮的エタノール注入(PEI)と肝移植の成績を多施設共同で後ろ向きに調査し
た報告では,Child—Pugh分類Cでは,平均生存期間が肝移植群95.3カ月に対してPEI
群31.5カ月,無再発期間が肝移植群139.0カ月に対してPEI群34.8カ月であり,PEI
に比べて肝移植の成績が優れていた
3)
。また,塞栓療法に関する443例の肝細胞癌に
対する後ろ向きの検討では,Child—Pugh分類Cでは塞栓療法後6週以内の死亡およ
び緊急肝移植の危険性がChild—Pugh分類Aの5.4倍,不可逆的な肝障害が出現する
危険性が59倍であったと報告されている
4)
。また,本邦の肝細胞癌に対する生体肝移
植症例の検討において,遠隔転移や脈管侵襲を認めない腫瘍径5 cm以内かつ腫瘍数5
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肝障害度C(Child⊖Pugh分類C)の肝細胞癌に対し,推奨で
きる治療法は何か?
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肝障害度C(Child—Pugh分類C)の肝細胞癌は,ミラノ基準内あるいは5—5—500基
準内
*
であれば肝移植が推奨される。
(強い推奨)
*
遠隔転移や脈管侵襲なし,腫瘍径5 cm以内かつ腫瘍数5個以内かつAFP 500 ng/mL以下
推 奨