146第Ⅵ章 急性膵炎の治療ドレナージが必要な膵局所合併症に対して内視鏡的ドレナージを行う場合に有用な方法は?CQ30[推 奨]超音波内視鏡下ドレナージによる経消化管的(主に経胃的)ドレナージが推奨される。どのような経皮的治療法あるいは内視鏡的治療法を患者さんに選択するべきかを今回のガイドライン改訂で検討したところ,内視鏡的治療の方が経皮的治療に比べて在院日数が短いという結果でした。この理由は,経皮的治療の方が内視鏡的治療に比べて,ネクロセクトミーを行うためにチューブの位置調整やチューブを太くする必要があったり,複数本必要であったりすることなどが挙げられます。一方,重大合併症および致命率,糖尿病発生率,消化不良の発生率は両治療で差は認めませんでした。以上より,内視鏡的治療が経皮的治療に比べ推奨されます。しかし,内視鏡的治療が解剖学的に不可能な場合もあり,両方の治療を組み合わせて行うこともあるのが現状です。主治医の説明を十分に聞いたうえで治療法を検討していくことが重要です。膵局所合併症に感染を伴うもの,また圧排性胆管狭窄,消化管狭窄などに伴う有症状例は治療適応となる。無症候性は経過観察可能だが,自然消退する兆しがない,むしろ増大傾向である症例では,感染や嚢胞内出血をきたす可能性が十分にあり,ドレナージを行うことも検討すべきである。ドレナージの方法の一つとしてERCP手技による経乳頭的ドレナージが挙げられる。膵仮性嚢胞には有用であるという報告(OS)1〜3)があるが,急性膵炎後の膵局所合併症の場合はドレナージルートとして確保できる程の膵管との交通を有していない症例が多く(OS)4),ドレナージ不良となる可能性が高い。被包化壊死に対する経乳頭的ドレナージの報告は少ないが,膵管との交通を有し6 cm以下の病変であれば治療奏功率が73%であったと報告されている(OS)(SR)5, 6)。1975年にRogersらにより直視内視鏡下の嚢胞穿刺術が初めて報告されて以来,経消化管的(主に経胃的)にアプローチする方法が内視鏡治療の主流である(CS)7)。その後,超音波内視鏡(endosonography;EUS)が登場し,1992年にGrimmらが初めてEUSガイド下ドレナージ法を報告した(CS)8)。EUSガイド下穿刺は消化管と嚢胞壁との間が最も短い穿刺経路を選択できる。膵局所合併症では門脈・脾静脈の閉塞に伴う門脈感染性膵壊死は非感染性膵壊死に比較して致命率は30%前後と高いとされています。この感染性膵壊死に対してはステップアップ・アプローチを行うことが推奨されます。ステップアップ・アプローチとは患者さんにとって負担の大きい壊死物質切除をいきなり行わず,まず負担の少ない経皮的(チューブを体外から感染性膵壊死に穿刺してチューブを留置すること)または内視鏡的ドレナージ(胃カメラを行い,胃から感染性膵壊死にチューブを留置すること)などを行い,その後留置したチューブの“通り道”を利用して,経皮的あるいは内視鏡を用いて段階的に壊死物質の除去(ネクロセクトミーといいます)を行うことをいいます。2回目:行うことを提案する-14/14名:100%■解 説(弱い推奨,エビデンスの確実性:中)▶投票結果:1回目:行うことを推奨する-3/14名:21%,行うことを提案する-11/14名:79%
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