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経腸栄養剤としては粘性や浸透圧などを考慮して,消化態栄養剤,半消化態栄養剤,成分栄養剤から下痢の有無などの病態に応じて選択する。従来は,経腸栄養チューブを透視下あるいは内視鏡誘導下にTreitz靱帯を越えた空腸(RCT)1〜3)あるいは十二指腸(RCT)3, 4)に留置した経腸栄養が有効であると報告されており,経腸栄養成分を20〜30 mL/hで開始し,数日をかけて100 mL/h(25〜35 kcal/kg/日)を目標に増量することが多かった。しかし空腸への栄養チューブの挿入が困難であるため早期経腸栄養の普及率が低いことが問題となり,近年胃管を用いた栄養の検討が多くなされている。重症急性膵炎における経腸栄養施行時の空腸管と胃管を比較した2005年の研究では,胃管による栄養群でも,空腸管と同程度の臨床効果(ICU入室期間,入院期間,致命率に有意差なし)が認められ,致命率や挿入手技による合併症はむしろ少ない傾向にあった(RCT)5)。その後,同じような解析結果が報告され(RCT)6〜8),2つのシステマティックレビュー報告が行われ(SR)9, 10),重症急性膵炎に対する胃管からの経腸栄養は空腸管からの経腸栄養と比較しても安全性で劣ることなく施行可能であるという結果であった(SR)10)(参考資料1)。さらに,急性膵炎診療ガイドライン作成ワーキンググループで独自に行ったメタ解析でも,胃管からの経腸栄養は空腸管からの経腸栄養と比較して臓器障害合併率,手技不成功率,致命率に差がない結果であった(図1)。したがって経腸栄養の投与経路としては,空腸管からの栄養に加えて,胃管からの栄養も代替経路として同等であるといえる。ただし,胃管からの栄養には胃食道逆流による誤嚥などの合併症の可能性があり,少量から慎重に開始することが必要である。経腸栄養剤は,その成分により消化態栄養剤,半消化態栄養剤,成分栄養剤などに分類されるが,これまで経腸栄養の有用性を報告してきた解析で使用されてきた経腸栄養剤に一定の傾向はなく,いずれの栄養剤を使用しても大きな差はないと報告されている(RCT,SR,CS)11〜13)。一方で,感染性合併症に対する積極的免疫栄養療法として,さまざまな免疫栄養療法の有用性が検討されてMedicine (Baltimore) 2018; 97: e11871. (SR) 11) Qi D, Yu B, Huang J, et al. Meta-analysis of early enteral nutrition provided within 24 hours of admission on clinical outcomes in acute pancreatitis. JPEN J Par-enter Enteral Nutr 2018; 42: 1139-1147. (MA)104第Ⅵ章 急性膵炎の治療CQ17経腸栄養ではどこから何を投与するか?[推 奨]経腸栄養の経路としては,空腸に限らず十二指腸や胃に栄養剤を投与してもよい。重症急性膵炎では,入院してから2日以内に経腸栄養を開始すると,腸の壁が補強されて腸から細菌が漏れ出しにくくなり,早く退院ができ,さらには重症膵炎により死亡する確率が下がることが明らかになっており,重症膵炎と診断されたらできるだけ早く経腸栄養を始めることが重要です。そのためには,どの施設でも経腸栄養ができるような一定の方法を普及させることが大切です。■解 説(弱い推奨,エビデンスの確実性:中)▶投票結果:行うことを推奨する-3/16名:19%,行うことを提案する-13/16名:81%

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