上肢:グレード C1 下肢:グレード C1Q130セルフケアは,十分な指導を受けて行う場合には,リンパ浮腫の発症予防や発症後の増悪予防となり得ます。一方,上肢リンパ浮腫に対する研究に比べ,下肢リンパ浮腫に対する研究は少なく,有効な指導内容や効果については,現時点で明らかにされていません。今後,更なる研究が望まれます。 平成20年度の診療報酬改定でリンパ浮腫指導が保険で行えるようになりました1)。指導の具体的な内容として,①リンパ浮腫の病因と病態,②リンパ浮腫の治療方法の概要,③セルフケアの重要性と局所へのリンパ液の停滞を予防および改善するための具体的実施方法,④生活上の具体的注意事項,⑤感染症の発症等増悪時の対処方法が挙げられます。また,平成28年度からリンパ浮腫複合的治療が保険適用となり,算定要件としては「弾性着衣または弾性包帯による圧迫,圧迫下の運動,用手的リンパドレナージ,患肢のスキンケア,体重管理等のセルフケア指導等を適切に組み合わせ行うこと」「一連の治療において患肢のスキンケア,体重管理等のセルフケア指導は必ず行うこと」と明記されています2)。医療制度上,セルフケアのためのリンパ浮腫指導を行うことは,既にリンパ浮腫診療の一部として組み込まれているといえます。 セルフケアの具体的な内容は,スキンケアとして患肢の傷や針刺し,巻き爪,虫刺され,ペットの引っかき,やけどに注意することとその対処,皮膚感染したときの抗菌薬の使用,サウナやスチームバス,熱い風呂などに対する注意喚起,旅行時の注意事項,運動の推奨,体重管理が挙げられます。 上肢リンパ浮腫に対するセルフケアの効果を検証した研究では,上肢機能,□痛,だるさなどの自覚症状や生活の質(quality of life;QOL)の改善が報告されています。上肢のリンパ浮腫と比べて,下肢のリンパ浮腫に関する研究は少ない現状ですが,下肢についてもセルフケアの有用性は同様に報告されています。リンパ浮腫に対するセルフケアの効果については,肯定的な報告が集積されている現状ですが,今後は患者さんに応じたセルフケアの内容,実施する頻度や時間など,具体的な指導法が確立されていくことが望まれます。推奨セルフケアのためのリンパ浮腫指導を受けることは有用ですか?解説A
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