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7関連する診療ガイドラインの記載 ASCOガイドラインでは,がん治療前の胚凍結については有効性・安全性が確立した技術であり,有効な手段として推奨されている。未受精卵凍結については男性パートナーが存在しない場合,ドナー精子の利用を希望しない場合,他に胚凍結を希望しない宗教的・倫理的理由がある場合,等に有効な選択肢であると明記されている14)。 ESMOガイドラインでは,胚凍結と未受精卵凍結については,原疾患の治療開始を2週間遅らせることが許容される場合に,安全で有効な技術であると推奨している15)。 ESHREガイドラインでは,他のガイドラインと同様の確立された技術であることに加えて,未受精卵凍結はパートナーがいる女性についても積極的に選択されることを明記している16)。 FertiPROTEKTのガイドラインでは,乳癌患者の妊孕性温存の適応について,予後が良好であること,原発性卵巣不全(POI)のリスクが中程度以上であること,もしくは,治療後の妊娠を考慮する年齢が35歳を超える場合としている17)。 日本乳癌学会編『乳癌診療ガイドライン2018年版』には,妊孕性温存の項目において,パー24行しなかった群とのDFSについては観察期間が十分とはいえないが,増悪が認められないことから影響は小さいと判断した。以上の議論の結果より,患者の望ましい効果と望ましくない効果とのバランスについては,妊孕性温存療法を行うことによる望ましい効果が「おそらく優位」であると評価した。 しかしながら,未受精融解卵子については,一般不妊症例においても1個あたりの継続妊娠率は,4.5〜12%13)にとどまっていることや,乳癌患者からの出産例の報告が限定されていることから,凍結と同等の望ましい結果が得られるとはいえないのではないかという議論がなされた。5)コスト資源のバランスはどうか 費用対効果については,採用された研究がなく,費用負担額や自治体による助成についても地域格差があるため評価することができないのではないかという議論になった。また,実行可能性については,施設や地域による受けられる生殖医療の格差が生じていることが指摘された。6)推奨のグレーディング 以上より,本CQの推奨草案は以下とした。推奨草案: 挙児希望の乳癌患者に対しては,胚(受精卵)凍結・未受精卵凍結保存を行うことを条件付きで推奨する。 最終投票には12人中9人が参加し,9人が推奨草案を支持した。会議に参加できなかった投票者も会議後議論を踏まえ検討し,投票を行い12人中12人(100%)の合意形成となり,採用に至った。 推奨するか否かの条件としては,患者の年齢・卵巣予備能・病期,治療開始までの時間,患者の希望,身体的・経済的負担等を考慮し,症例毎に癌治療医と生殖医療を専門とする医師が患者と十分話し合ったうえで適応を検討する必要がある。

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