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2看護師・助産師の役割1)がんの臨床における看護師の役割 乳癌の臨床において,診断の衝撃から治療方針決定時,治療に伴う有害事象のマネジメントおよび継続的なフォローアップの中で,常に患者の生活を支える役割を担っている。看護師は患者とその家族のニーズ,時にはunmet needsといわれるような潜在化されているニーズを拾い上げ,それらを患者が置かれているヘルスケアシステムの中でいかに調整し解決に導いていくかが求められる。まさに,乳癌患者の妊孕性支援においても同様である。乳癌と診断を受けた女性は,精神的に脆弱な状況で治療方針や術式選択等,短期間で意思決定しなければならないことが多く,治療後の妊娠・出産にまで考えが及ばない状況にある。一方で,妊孕性に執着するあまり,薬物療法に対する意思決定が揺らぐ患者にも出会う。看護師は,適切な時期にニーズを拾い上げ,医療者間で共有し,患者と家族の納得した意思決定のプロセスを支援することと継続的な心理的な支援,そしてがん治療と生殖医療の橋渡しとしての役割があると考える。 看護師ががん患者と妊孕性に関する話し合いをためらう理由には,知識が不足していることや紹介先のリソースの不足,患者に伝えるタイミングや医師の態度,患者の心理的・経済的負担等が報告されている1)。筆者らが2016年に行った全国がん診療連携拠点病院の看護師の調査からも同様の要因に加えて倫理面への配慮の難しさが挙げられた2)。がん看護の立場から,具体的に看護師がいつどのような関わりを行わなければならないのか考えていきたい。184きるようになる。また治療期間を通して支援を続けることで,患者の心のケアを継続することが可能になる。 その他,生殖心理カウンセラーによって医療情報の理解を支援することや患者とパートナー・家族間におけるコミュニケーションを促し自己決定できるように支援することが可能であったり,患者会・ピアサポートによって,患者の孤独感や疎外感,不安の緩和につながる可能性がある。また社会福祉士等により,医療費の負担や妊孕性温存についての助成等についても情報提供することができる等,適切な職種の介入を促すことで,患者にとっては様々な情報を受けとることができ,意思決定の助けになると考えられる。 国内では一般社団法人日本がん・生殖医療学会が,がん・生殖医療専門心理士の育成や日本がん・生殖医療学会認定ナビゲーター制度を設置し,多職種による患者支援を広める活動を行っている(http://www.j-sfp.org/)。2)看護師による支援の実際(1)診断時から治療方針決定までの意思決定支援 乳癌患者の妊孕性を支援するためには,できるだけ早い時期にニーズを拾い上げる必要がある。Shimizuらの報告3)によると,乳腺外科医の68%が乳癌患者と妊孕性に関して話すことについて肯定的な姿勢であったものの,日常的に生殖医療への紹介を行っている医師は30%程度であった。医師が妊孕性について患者と話し合うことに対して障害と感じている要因は,再発の可能性が高いこと(57%),患者から関心が示されないこと(49%),紹介する生殖医療の専門家がいないこと(38%),が上位に挙げられている。 がん患者の妊孕性温存療法に関する意思決定のプロセスへの関連因子をレビューした結果から

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