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PSが良好で主要臓器機能が保たれており,化学療法に対してリスクとなるような基礎疾患や併存症がなければ,70歳以上の高齢者にも,術後補助化学療法を行うことを推奨する。ただし,oxaliplatinのフッ化ピリミジンに対する上乗せ効果が小さくなることを考慮する。(推奨度1・エビデンスレベルA)CQ 17 73は,CAPOX群が75%と多数を占めるものの,3カ月投与と6カ月投与の3年無病生存は同程度であり(6カ月77.9%,3カ月79.5%),IDEA試験と同様の傾向が確認された145)。また,感覚性末梢神経障害の発現も3カ月投与で有意に少なかった146)。 以上より,OX併用療法でも6カ月間の術後化学療法が推奨されるが,特に再発低リスク例においてはCAPOX 3カ月間投与も治療選択肢となり得ると考えられる。CQ 17:70歳以上の高齢者に術後補助化学療法は推奨されるか? 欧米で行われた5-FUベース術後補助化学療法のランダム化比較試験のpooled analysisやレジストリデータに基づく解析541‒543)の結果から,70歳以上の患者においても,70歳未満の患者と同程度の再発抑制効果と生存期間延長が示されている。米国において,SEER等のがん登録や大規模コホート研究を併合した5,489名のリアルワールドデータの解析から,75歳以上の患者における5-FUベース術後補助化学療法の生存期間延長も報告された544)。有害事象については,高齢者では好中球減少が強く出る傾向にあるが,他はほぼ同程度である541)。よって,PSが良好で主要臓器機能が保たれており,化学療法に対してリスクとなるような基礎疾患や併存症がなければ,70歳以上の高齢者にも,術後補助化学療法を行うことを強く推奨する。 一方,フッ化ピリミジン単独療法にoxaliplatin(OX)を併用するベネフィットは,70歳以上に対しては,70歳未満に比べると小さくなる可能性がある。フッ化ピリミジン単独療法とOX併用療法を比較した3つの第Ⅲ相試験であるMOSAIC,NSABP‒C07,XELOXAを統合したデータにおいて,70歳以上(1,119名)に限った解析を行うと,5-FUベース術後補助化学療法にOXを併用する効果は観察されなかった(無病生存期間のハザード比0.94,全生存期間のハザード比1.04)545)。一方,X‒ACT(5-FU+l-LV群),XELOXA(5-FU+l-LV群,CAPOX群),NSABP C‒08(FOLFOX群),AVANT(FOLFOX群)の各試験から該当する群を併合したデータの解析では,OX併用の再発抑制効果は70歳未満に比べて小さくなるものの,70歳以上(345名)でも観察された(無病生存期間のハザード比70歳未満0.68,70歳以上0.77)546)。以上,70歳以上に対するOX併用療法は,一貫した結果が得られていないことを考慮すると,70歳未満の患者でのリスクベネフィットバランスと異なると考えられ,その適用は慎重に判断する必要がある。

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